ユーライ

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライトのユーライのレビュー・感想・評価

4.5
TVアニメのみ、『ロンド・ロンド・ロンド』未見。今日において「百合」というのはとっくの昔に商業的な儲け話として見做されていると思われ、オタク界隈のあちらこちらで百合的なものはいくらでも観測可能なのであって、物語内における尊さとは反比例するようになかなかどうして現実的なしがらみが存在しているのが現状である。今作のTVアニメで行われたのは、そのような百合を窃視し搾取するような、オタクの卑近な視線をあえて作中にキリンとして介在させ、更に「舞台」を使うことによってループ的な終わりの無い物語、尊い関係性の永続を堂々と肯定してみせる、グロテスクとも形容できる試みだった。そこに葛藤は存在しない。別れることもない。成長は先送りにされ、微温的な楽園が存続し続ける格好の箱庭であり続ける。当然のように、今回の劇場版で乗り越えるべき目標は「そこ」以外にないのであって、一回終わりを告げても商業的な要請で続きを期待され続ける彼女達は宿題として残された重い感情を改めて回収していく。異物であったバナナはあるべき位置に戻り、キリンは焼死し、塔は崩れ、線路は朽ちていく。『AKIRA』や『マッドマックス』といったフィクションの記憶を無節操に反芻させて辿り着いた先は、レールのない未開の荒野しかない。空っぽになろうとも、ピークを過ぎようとも、人生は続くよどこまでも。よって彼女達は我々観客の手を離れ、遠くへ行ってしまう。無名の誰かとなり振り返らずに去っていく。万感のさようなら。オタクなんぞに構う暇なしの人生を生きていく。やがて実写の映像になり宇多田ヒカルの歌が……は『シンエヴァ』だった。随所に現れるCGの無機物感、テキストを直截に画面に出す思い切りの良さは、所詮再生産に自覚的な何よりの証、その居直り方が痛快で嫌いになれない。弱くて何が悪い、というような。以上のしょうもない読みを行わせてくれることに感謝しつつ、一番の見どころはやっぱり激重感情バトルに尽きる。感情を浴びろ、台詞にやられろ、近い、近い、近すぎる、本当にハラハラする。
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