藤田武彦

竜とそばかすの姫の藤田武彦のレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.8
【感情移入させてから描くべき】

仮想空間での、歌のシーンは伸びやか。

ただし、主人公をもっと魅力的に描く方が良いですねー

実空間での女子高生に感情移入させてから、期待を込めたアクションを描くべき。

アバターを着て歌う姿を批評するとしても、まずはしっかり描くこと。そのあと、別のシーンで客体化すれば大丈夫。

竜も吠えるが、大変さが迫ってこない。恐竜は滅ぶ運命で、母なる海のクジラに戻るとして、そのクジラも大画面を埋める偉大さで描いては?2Dのオープニングは大きく登場させ、CGで妖精に散るなど。

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【主人公をしなやかに】
また、高校生活の絵に強さがほしい。

線が細く、涙の記号だけになってしまう。女子高生の本心を描いたのか、脚本問題かは分からないが。

カラオケシーンのようなアクションや、セリフに頼るがPC室のようなウィットなど、面白い表現はある。

やはりSFシーンの方が魅力的。あくまで実生活の話だとしても、オープニングとラストでつながれば大丈夫。

とはいえ、肝心のSFシーンも、予告編以上の力はない。アナ雪キム・ジンがデザインした、ディズニー的な3D感は良いが、髪の毛が動くのみ。しなやかな力強さがほしい。

宮崎駿から、しなやかな強さを引いた絵。
エヴァンゲリオン時代からの。
日本のアニメも、そろそろ強い画に戻っては?

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【力強くエンターテイメントを作る】
監督は、もっと観客の本能に訴える、キャッチーなエンターテイメントを作りにいった方がよい。それでも、エッセンスは伝わる。

ネガティブな問題を、力強く描くことを、ボイコットしてしまったのでは?しっかり描いて、別のところで客体化すれば大丈夫。

反権力。竜の父への反撃も、違和感が残る。
戦争を重大に描いても、戦争を賛美したことにはならない。反戦映画として成り立つ。

言葉による反撃の例としては、トレインスポッティングのダニー・ボイル監督の「トランス」の方が、2倍面白い。

反戦としては、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス監督の伝説のデビュー作、「THX-1138」の方が、100倍重要。

エンターテイメントとしては、「ターミネーター」、「マトリックス」の方が10倍面白い。

次回作に期待。
藤田武彦

藤田武彦