まっつん

プリズナーズ・オブ・ゴーストランドのまっつんのレビュー・感想・評価

1.0
園子温×ニコケイのタッグ。数々の名作・傑作が未公開になる我が日本国において、何故か毎年1本以上のペースで出演作が劇場公開される謎の役者、ニコケイ。オスカー俳優にも関わらず浪費癖が祟り最近は仕事を選ぶ気配が全く無い謎の役者、ニコケイ。

なんて言ってますけどニコケイ好きですよ、僕。最近の作品だって全然面白いもの多いし、特にポール・シュレイダーと組んだ「ドッグ・イート・ドッグ」は傑作でした。今作に関してもニコケイはいつもの調子で頑張ってます。というか面白い!と思う場面はほぼ全てニコケイの力だと言って良いでしょう。

ニコケイ以外がどうだったかと言うと….推して知るべしという言うべきか、残骸のような映画でした….園子温の作品て結構モノによって当たり外れが大きいなと思っていて。それこそ、「自殺サークル」やら「愛のむきだし」やら「冷たい熱帯魚」は超好きなんですよ。超面白い!でも「ヒミズ」とか「希望の国」は結構ダメで….ネトフリの「愛なき森で叫べ」もちょっとなぁ…という感じだったんですよ。その点本作は過去最高にキツいのが来ちゃったなと….ハッキリ言って観てるのが苦痛なレベルで酷い….園子温どうしちゃったの?って少し心配になるレベルです。

とにかく本作、「ぶっ飛んでてクレイジーな世界観」を見せたいって考えが根底にあると思うのですよ。それ自体は良いですよ。寺山修司的なアングラ小劇団感覚と言うんでしょうか。そう言ったものを立脚として奇抜な映画を撮りたいと言う欲望。それ自体は否定しません。しかし、その試みが全くと言っていいほど作品内で機能していないのです。上滑り感が半端じゃないんですよ。それは力を入れている箇所ほど魅力的じゃないからなんですけど、観ていてひたすら痛々しい。でまた、「世界観のひけらかし」がしつこくてね…そろそろ面白くなるかな?と思ったところで、追い討ちのように色々やってくるんで、「この映画はいつになったら面白くなるんだい?」と。そんなに長い映画じゃないのに、5回ぐらい舌打ちなんかしてしまいましてね。本当に途中で出ようかと思いましたよ。それぐらいキツいものがある。
そんなことばかりに腐心するもんだから、展開も支離滅裂ですよ。

まぁ、本当に園子温どうしちゃったのよ?という心配が先に来ちゃうのが真の駄作たる所以なんでしょうか?僕は園子温って普通に映画が上手い人だと思っていたのでここに来てこれは….かなりガッカリ。どのような製作体制だったのかは分かりませんが、多分いろいろと思うようにいかないことがあったんじゃないかと思います。そうじゃないと、園子温レベルの監督でこんな出来にはならないと思う。

ニコケイをはじめ、ソフィア・ブテラやビル・モーズリーなど好きな役者が出てるだけに悲しい気持ちになりましたよ。ニコケイは本作きっかけで滋賀に家を買ったらしいですが、そういう金の使い方してるからこんな映画に出なくちゃいけなくなってんだろうがテメェは!と今度会ったら言っておきたいと思います。