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狂猿のradioradio526のレビュー・感想・評価

狂猿(2021年製作の映画)
3.0
「極北に佇む血塗れの猿…栄光よりも刺激をくれ!」

「狂猿」鑑賞。

デスマッチ・ファイターとして長らく一線で戦い続けるプロレスラー・葛西純を追ったドキュメンタリー。腰椎間板と頸椎間板ヘルニアの併発により長期欠場から復帰に向けて調整に入る葛西に新型コロナウィルスという未曽有の事態が襲い掛かる。

プロレスというのはそもそも色眼鏡で見られるものである。
格闘技に追いやられて衰退していても、昨今のようにドームを満杯にする程の隆盛を極めても基本的には変わらないと思っている。
その中でも極北と断言出来るのは所謂デスマッチと呼ばれるジャンルだ。
いや…むしろそれが色眼鏡で見られる所以と言っても良いのかもしれない。
フレッド・ブラッシーがグレート東郷に嚙みついて、その流血をテレビでみた老人がショック死した頃から残酷なショーとしての暗部は存在している。
ところが「おばあちゃん!心臓には気をつけてね~w!」と会場の老人に向けて叫んで、そのまま割れた蛍光灯を額に刺す彼らのムーブに暗さは無い。
ジャンルが長く生き残る過程での多様化…プロレスにも幾多の枝分かれがあり、このエキストリームなジャンルにも熱狂的なファンが存在する。
その中でも多くのファンや同僚レスラーが葛西純の特異性を声にする。
「葛西純にしか出来ない」「葛西純だけしかあの到達点にいない」

ドキュメンタリーなので一般的なストーリー映画とは違う。
ただ、これほどまでに極端な題材の場合、ストーリーよりも物語性が浮かび上がるような気がするのは何故だろうか。
ふと…ミッキー・ローグの「レスラー」のラストシーンを思い出してしまった。
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