今年は『わたしは最悪。』、『リコリス・ピザ』並びに本作品もそうだけど、走る女の映画にハズレなし。
クリステン・スチュアート演じるダイアナのクローズアップショットがとにかく多い。
ダイアナの表情の作品かつ、彼女の知られざる内面について描いた作品であることは勿論明らかだが、彼女が運転(=コントロール)する車より先に王室のシステムやサンドリンガム・ハウスのガチガチの警備体制を見せることで、王室に彼女の人生をコントロールされてしまっていることもファーストカットから強調していた。
一方で表情の作品とは思いながら、ダイアナの表情から彼女の感情を読み取る以外にも、メディアに晒される彼女が他人からどう見えているかも同時に考えている自分がいた。
ダイアナが何度も"How do I look?"と尋ねていたように。
コース料理、三日間の日程の全イベントごとに用意された衣装、ビリヤードなど、順序正しく先が決まっているモチーフの反復が目立つことも王室のシステムの中で生きることの息苦しさを感じる。
ダイアナと、王室という特異なシステム/舞台のサンドリンガム・ハウス/彼女の生家という閉ざされた「館」たちの構造及びアン・ブーリンの亡霊はゴシックホラーぽさもあってよかった。
事実を基にした寓話の悲劇とあるように、ダイアナの特徴的なヘアスタイル、衣装をそのまま作品に引っ張ってくるわけでなく、クリステン・スチュアートにマッチしているかどうかを考えたうえで少しずつ変更したところが、本作品がただのコスチューム・プレイ作品に留まっていないというところもいい。
あとは走るシーンと真珠のネックレスという彼女にはめられた重い足枷を壊すシーン、すごく好き。