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わたしは最悪。の鹿のレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.3
ユリヤはアクセルとの別れ話のときに「考えるより感じたいの」というようなことを言うように、フロイトについて食卓で話す「考える」アクセルと、お互いの腕を噛んだり匂いを嗅いだりして「感じる」アイヴィンという対照的な二人の男性を描いているのがよかった。

アクセルの両親の家に行って義兄の子供に囲まれているアクセルを眺めるとき、エピローグで赤ちゃんを抱っこしているアイヴィンを眺めるとき、ユリヤがどちらも窓枠を通して見ているのも印象的だった。
子に囲まれて幸せそうな父親の笑顔という一見幸せそうな光景は、ユリヤにとっては絵画みたいにリアリティがなく、自分の周りに起きることではないとどこか一線を置きたい事物のように感じた。

あとは子どもを持つことについて考えされられるシーンは、ユリヤが父親の家を訪れたあとにアクセルに「きみも家庭を持つべき」と言われるところ。
私も両親が離婚しているからたまに考えたりするが、父親とは仲もいいし好きなのだけど、大人になるまでに離れて過ごしていた期間があり過ぎて、両親と子どもという一般的な家庭のなかで夫が父親・自分が母親という役割を担うというのが将来想像できない。
そして離婚した場合は子供にとってはもっと悲惨(父親/母親が暴力を振るったりするような別れて片親になる方が幸福になるパターンの離婚じゃない場合)で、私は母がひとりの人間として生きるのに子供の自分は足手まといではないかと考えてしまうこともあったので、家庭が欲しいという彼氏の希望はもやっとする時でさえある。

ユリヤと自分の境遇を重ねてしまうことがあってまとまらなくなってしまった感想だけど、この映画はいかに「ユリヤは私だ」と感じるかで評価が分かれるだろうなと思った。
私はユリヤと自分の痛みを重ねてしまったから好きな映画だなという感想とともに結構精神的なダメージを食らったのだけど、オスロの街並みやポスタービジュアルにもなっているシーンの美しさにはとても癒された。
フグレンでコーヒー飲みたくなった。
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