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スペンサー ダイアナの決意のFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

 冒頭の隊列を捉えた流麗なショットからメルヴィルを、蝋燭や自然光を生かした照明とカメラワークには ヴィスコンティを想起した。サイコロジカルな内面と外面の断絶を描きながら、安易なホラー演出に陥らず、不穏さをたたえながら鏡や階段という古典的な舞台設定や視線によってアイデンティティに揺さぶりをかけていく様が素晴らしい。横移動を並走する素晴らしいカメラワークは最後のドライブに結実。『レベッカ』や『ブラック・スワン』を受け継ぐに相応しい出来。まぁこんなグダグダ言わなくても照明、衣装、美術、そして撮影と全てがレベルが高く、ジョニー・グリーンウッドのスコア含めて一流なのでウットリする内容。

 未来が無く、過去と現在しかない舞台に三日間いることになるダイアナは、同時に過去と現在を抱えた一人の女性でもあった。だからこそ彼女は自分の経験に従い、ささやかな「奇跡」を子供たちと分かち合う。リンクレイターの諸作の様に特定の時間から抜け出した瞬間の駆け出す&ドライブの素晴らしいショットは美しく、クライマックスでもあり切なくもあった。

 それにしてもクリステン・スチュワートは大変だったろうな。演技の半分以上はフラストレーションについてだったのだから。そしてパブロ・ララインという作家の筆致と独自性には目を見張るばかり。というわけで秀作でした。
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