ノラネコの呑んで観るシネマ

ホロコーストの罪人のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ホロコーストの罪人(2020年製作の映画)
4.5
1942年のある日、ボクシングの名選手で妻と共に幸せな生活を送っていた主人公は、突然現れた男たちに連行される。
ナチス占領下のノルウェーで、秘密警察によって行われたユダヤ人弾圧を描く実話。
ヨーロッパを征服したナチスは、各国のユダヤ人に狙いを定める。
占領したそれぞれの国でユダヤ人を強制収容所にまとめ、その後アウシュビッツなどの絶滅収容所に移送して殺すのだ。
しかし最終的に虐殺したのはナチスだが、最初に無実のユダヤ人を弾圧し、連行したのはそれぞれの国の政府だ。
この視点が本作のポイント。
罪人はナチスだけでなく、占領下の全ての国に、ナチスに協力し昨日まで隣人として暮らしていた人たちを逮捕し、絶滅収容所に送った者たちがいる。
そのことから目を背けてはいけないと、ノルウェーの作り手たちが自らの中にある罪に、真摯に向き合った力作。
ナチスの占領はほぼ全ヨーロッパに及んでいたから、ホロコーストに関しても無数のドラマがあることを改めて思い知る。
ノルウェー政府が責任を認めて謝罪するまでに要した長い長い時間を考えると、本当の意味で歴史に向き合うのは、世界のどこでも難しいものなのだな。