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スーパーノヴァのyukiのレビュー・感想・評価

スーパーノヴァ(2020年製作の映画)
5.0
観賞後、数週間以上、経過したのにいまだ余韻が深く残る。
「ここで🔚⁉️」と当惑したラストに残された謎もずるい。今作が心から離れない。
(来月になれば、スコア💯に→するかもしれない)

【story】
ピアニストのサム(コリン•ファース)と作家のタスカー(スタンリー•トゥッチ)は20年来のパートナー。
愛犬ルビーとキャンピングカーで旅に出るが、タスカーに降り掛かるゆっくり記憶と能力を失う病が、ふたりのかけがえのない過去と添い遂げるはずの未来を消し去ろうとしていくー





🎼♪♬🎶 以下ネタバレありで 🎹♪♬





ラスト、観客もステージも表示されない暗闇でサムがエルガーの「愛の挨拶」をゆっくりしたタッチで弾いている。
この曲はタスカーが愛してやまないお気に入りにもかかわらず、サムが決して弾いてくれない曲だった。
これはタスカーの幻想?
(でも、記憶と能力を失いつつある彼にそれが理解、想像できるのだろうか?)
サムからのレクイエム?
(タスカーという星を失ったから、真っ暗闇で演奏しているのだろうか?)

🤔今作のラストは思い浮かぶ限り、想像していいとの解釈に落ち着いた。
タスカーの病状も、サムの心境もきっと変化するだろう。

サムの負担にもなりたくなければ、自分が誰かもサムが誰かもわからなくなる状態で、
「ずっと一緒」に添い遂げることは考えるだけで苦しくなる。
でも生きているタスカーが自ら消えゆくことに同意などできない、彼を失いたくないサムの気持ちも突き刺さる痛みをつたえてくる。

「失って悲しいと思うものは、良いものということ」
タスカーが命を消さなくても、サムが彼を「失う」ことは遠からずやって来る。
それでもふたりの間に流れる愛はかけがえないものだったに違いない。

【notes】
☆タイトルのスーパーノヴァ(超新星)とは
星がその一生を終えるときに起こす大爆発のこと。
死にゆく星が消えることで、銀河系で最も美しい輝きを放つことからタスカーを象徴。

☆スタンリー•トゥッチが20年来の親友コリン•ファースに(独断で)共演オファー。
(当初、ふたりの役は逆!だった)

☆コリン•ファースが演奏したのは
エルガーの「愛の挨拶」。
コリンが演奏できる、無理のないものとして選曲されたらしい。
がエルガーの生涯を確認すると、サムがタスカーにこの曲を弾きたくなかった思いを感じてしまう。

※残念ながらコリンの演奏はみつけられず

https://m.youtube.com/watch?v=WHDnY2Nn-9o


☆エドワード•エルガー
•初代準男爵サー・エドワード・ウィリアム・エルガーは、イングランドの作曲家、指揮者。もとは音楽教師でありヴァイオリニスト

•エルガーが29歳のとき、後のサー・ヘンリー・ロバーツ陸軍少佐の娘であるアリスを新しく弟子に取ったことが馴れ初め

•エルガーより8歳年上のアリスはイギリスの名家に育ち、散文、韻文作家として当時既に著書も出版している才媛

•周囲の反対にもかかわらずふたりは1888年に婚約し
エルガーからアリスに婚約記念として贈ったのが「愛の挨拶」

•「エニグマ変奏曲」で名声を獲得したのは結婚から10年後の1899年のこと

•アリスは、エルガーの仕事のマネージャー、社会的な秘書となった。彼の気が動揺すれば宥め、音楽には的確な批評を与えた

•1920年72歳のアリスは肺がんに倒れ、短い闘病の後にこの世を去る
エルガーはアリスの死去とともに創作意欲を落とすが1923年以降は徐々に作曲活動を再開する
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