ナガエ

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のナガエのレビュー・感想・評価

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いやー、凄い作品だったなぁ。

マジで、なんのこっちゃさっぱり分からん映画だった。

こんなことを書くと、映画ファンに怒られるかもしれないけど。

僕には、冒頭から最後の最後まで、ほぼすべての場面が、何を描いているのか分からなかった。裏のテーマが分からない、とかそういう話じゃない。何の場面なのか分からないのだ。

まず冒頭から衝撃だった。どうやら日本人兵士が切腹させられそうという状況らしいのだけど、どうしてそうなったのか分からない。

それは、言葉が聞き取れないからだ。映画では致命的ではないだろうか。

とにかく、「日本語」で会話がなされる場面の多くで、セリフが聞き取れない。ビートたけしは滑舌が悪いし、英国人兵士という設定の日本語通訳の日本語もメチャクチャ頑張らないと聞き取れない。

そういう演出なのかもしれないけど、多くの役者が早口で(それが当時の日本兵の喋り方なのかもしれないけど)、しかも戦時中の耳慣れない単語が混じったセリフだから、全然聞き取れない。まずそこがメチャクチャハードルが高かった。

だから、セリフがちゃんと理解できるのは、外国人が喋っている(つまり日本語字幕が出る)場面という、皮肉なことになった。この映画は、かなり日本語字幕が表示される場面が多いので、だったら日本語のセリフも全部字幕で出してくれたら良かったのになぁ、と思った。

あと、僕には最後まで、ジャック・セリアズ(デヴィッド・ボウイが演じている)が何者なのかよく分からなかった。何者、というか、彼が他の人物とどういう関係性なのか全然分からない。

今、HPの内容紹介を読んでようやく、「ヨノイがジャックに惚れているのか」ということが分かった。まあそうなのかな、と思ったけど、確証がないというか、ヨノイっていう人物の行動原理が謎すぎて、何がしたいのかよくわからない。映画の中で、日本兵に囚われた俘虜たちが、日本兵の意味不明な価値観や行動に嘆く場面が結構出てくるんだけど、それは、現代の日本人から見ても同じだよなぁ、と。切腹とかやっぱ意味不明だし、「恥をさらすくらいなら死ぬ」とか、「責任がないやつでも償わせなければならない」みたいな謎の精神論にはついていけない(まあそれは、この映画を撮影した時点でさえそうだったでしょうけど)。日本兵たちの行動原理に共感できないし、共感できなくても別にいいんだけど、言動の意図がそもそも理解できないから、行動からその背景を察するのが難しい。だから全然ストーリーが理解できない、ということになる。

で、何故か途中で、ジャックの過去の回想みたいな場面が続くんだけど、あれもなんなんだかよくわかんなかったし、最後の20分の内10分ぐらい寝ちゃったから、突然ジャックが埋められててビックリした。

個人的には、名作とか古典とか呼ばれるものに触れたいという気持ちは常にあるし、一応意識的に触れようともしているつもりだ。しかし、大抵受け入れられない。もちろんその背景には、「映画にせよ小説にせよ芸術にせよ、それが制作された時代背景を理解していなければならない」という、教養的な問題があることも理解している。そういう背景をちゃんと知った上で、ちゃんと自分の内側に取り込みたい気持ちも、あるっちゃある。

しかしこの点に関しては、まだまだ口で言うだけで、なかなか実行が伴わない。
ナガエ

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