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戦場のメリークリスマス 4K 修復版のyoko45のレビュー・感想・評価

4.8
 不思議、ほうとうに1983年の作品でしょうか。演技の素人(坂本龍一さん、ビートたけしさん)を起用して、ぎこちなさを逆手にとり見事にハマり役、坂本龍一の音楽は何回も聞きたくなる旋律。
 戦時下の捕虜収容所が舞台、捕虜に容赦ない日本兵の姿、やせ細った何百の捕虜、これだけでも邦画としては稀有な作品だとあらためて感じます。
 Dボウイは映画は素人と記憶してましたが、いま調べたらエレファントマンの舞台をやっていた情報をみて多彩な方だったのだなと感心。
 坂本さん、たけしさんも素人ならではの味(軍人役だからかも)が出ていますが、捕虜役、Dボウイの一挙手一投足が神々しいです。
 その捕虜(Dボウイ)が気になり、気持ちを抑えようにも周囲から見ると抑えられていない微妙な苛立ちを演じる坂本さん、合っています、ご本人は納得してなくてもこれが良いのです。
 凡庸な軍曹を演じたビートたけしさん、これまたご本人は自身の演技に納得してないみたいですが、ほかの軍人と大差ないのに処刑される運命を迎える軍曹役、合っていました。
 最後の軍曹の言葉(メリークリスマス、ミスターローレンス)とその表情は有名で印象的です。それを上回る場面が大尉(坂本さん)の高ぶった感情を静めるため、捕虜(Dボウイ)が歩みより大尉を抱擁する場面。しかもこの場面の揺れて駒送りみたいなる映像が機材の不具合による偶然の産物というのだから…
 製作過程の話題も豊富で面白いです。当時大笑いしたネタ、大島監督が最初の場面に使われるトカゲが思った通り動かないことに腹を立て「お前はどこの事務所だ!」と怒鳴りつけるなど事欠きません。こういう話題が昔の記憶に頼らなくても検索して出てくるのが今となってまた楽しいです。
 そう考えると監督の人選は紆余曲折したものの正解であり、計算しつつ計算外の賜物をもたらし、30年40年経っても色あせるどころか一層輝いて、昨今の作品と比べても異色かつ群を抜く、何かの神様が降りてきたような作品だと。
 書きすぎました。
 
(主な登場人物)
 ヨノイ大尉、捕虜収容所所長。陸軍のエリートだったが、2.26事件の時には満州にいて同志と決起できず、死に遅れたと感じている。
 セリアズ少佐、上流階級出身で弁護士、戦場の英雄となるも現地村人の命を守るため捕虜となる。完璧さを求めるあまり、障害者の弟にもそれを求め見捨てた過去が心に陰を落とす。
 ローレンス中佐、地方大学の出身。日本滞在の経験をもつ。捕虜収容所では通訳として日本側と捕虜側の間に立ち、争いが大きくならないよう気を配る。
 ハラ軍曹、ヨノイ大尉の部下。捕虜の扱いは容赦ないが、日本語で会話できるローレンスは話し相手にする。

(メモ)
誰もが正しく間違っている
 
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