まのん

オートクチュールのまのんのレビュー・感想・評価

オートクチュール(2021年製作の映画)
3.7
評判はあまりよくなさそうだけど、個人的には好きでした。

この映画では、移民からの視点でも、フランス人からの視点でも、移民とフランス人が対極にあるように捉えられている。貧困に苦しむ移民に対して真逆にいるのはフランス人の富裕層。彼らの富の象徴であるDiorで移民の少女が働く。
移民の少女が手に職を付けるサクセスストーリーだけど、ある意味、手先が器用だからと縫製工場で働らかされる移民女性たちと同じなのでは?とその点には疑問を抱いた。でもDiorのお針子さんは名誉な仕事だからその点はスウェットショップとは違うんだと思う。ただ、Diorのお針子さんの仕事の場合は、フランス女性たちが安い給料で忙しく働いているという…。美しいドレスにうっとりする一方でそのドレスの裏にあるお針子さんたちの努力や待遇を想って複雑な気持ちになりました。誇りを持って名誉な仕事を全うする一方で給料は安く、自分の時間はなく、パリ郊外に住まなければいけない。移民とフランス人の間には大きな隔たりがあるはずが、実は両者の下層の暮らしは似ている。そんな描写がポイントなのかも。
"ねえ何とも思わない?めちゃくちゃ高価なドレスを奴隷の給料で土曜に縫うなんて"
ーー"奴隷の給料じゃないわ そんなことは二の次よ 大事なのは お金じゃない 本質的な価値よ 真の価値"
まさにこのセリフに表れていると思う。


パピチャのリナ・クードリさん目当てで観たけど、今作も素敵だった。あとシャイニー・シュリンプスのRomain Brauさんも出てた!こちらも脇役ながらとっても素敵でした。

頑固なエスターと同じく頑固で反抗的なジェイドのぶつかり合うシーンが多すぎるし、中途半端な恋愛要素はいらないようにも思えたけど、最後にはいい気持ちで観終わることができました。血のつながりのある母/娘だけがすべてではないし、誰にだって居場所がある。人との出会いが人生を変えることがある。そんな希望を感じる映画でした。
誰だって問題を抱えてるんだから、自分ばかり辛い人生だなんて悲観的にならず、笑顔で周りの人と関わっていかなきゃだめだなー!新生活頑張ろう!!!

🌟600本目
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