教授

岸和田少年愚連隊の教授のレビュー・感想・評価

岸和田少年愚連隊(1996年製作の映画)
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幾度となく繰り返し観ている作品。
井筒和幸監督のような「プログラム・ピクチャー」の職人監督はとても好きだ。

本作も井筒監督のベースにある「関西」的な土着性を全面出した世界観ながら荒々しい言葉の応酬というよりは、少し引いてみせる独特のオフビートさが洒落っ気を効かせている。
加えて独特のワードセンスが持つ不良にありがちである「ポエティック」にも感じるセリフ回しと、そのテンポ感、あるいは間の演出が見事。

笑いと暴力の表裏一体の構造は、北野武監督の映画でも証明されているように、本作でも笑ってしまうような言動が常に暴力と結びついている。
しかし、本作の舞台となる「岸和田」の市井の人々は、さまざまな形で暴力と笑いの両輪を日常として生きている。
この世界観の構築が行き届いているからこそ「地域性」というのが映画の中で上手く機能している。

個人的には、その「関西地方」に根差した「笑いの文化」や同じく吉本興業の所属芸人たちの「お笑い」には苦手意識が強いのだが、本作は別格。
登場人物の全てが実在感を持ち、演技においても、外したところがまるでない。
テレビで観るナインティナインや、一時期は出ずっぱりだった宮迫博之や、芸人たちの演技がズバ抜けている。

随所に挟まれる既成曲のセレクトの見事なDJセンス。
しかしアメリカンニューシネマ譲りのフィルム画質。
その映画的ルックと、泥臭い世界観が完璧に調和して、日本映画の青春映画として、意義のある傑作になっている。
映画的快楽の高い見事なエンターテイメント作品。
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