パンの製造工程とかで労働というものを見せつけられると鬱々とした気持ちも少し湧いてきてしまうけれど、自然主義的な撮り方や人間の生きてるって感じが良いからやはり見入ってしまうんだよなあ。

• #名作短編

こういう映画は見たことがあって、たとえば共産党の文革時の革命ドキュメンタリーであったりして、それらは両方ともえてして、なぜこれがこうつながるのかを観客に考えさせ続ける微妙に連想ゲームみたいで気持ちよくて、不思議な魅力がある。
ガキがこちらを見てくるカットも平然と入れまくってて壮絶な太々しさを感じる。

オリヴェイラの「パン」は、麦の栽培から収穫、製粉、製パン、流通、そして消費に至るまでの過程を映したドキュメンタリー風の作品である。

物語は農家の婚姻の場面から始まり、夫婦が畑を耕し、種を蒔く姿を経て、やがてパンを買うために並ぶ人々や工場で働く労働者へと視線が移っていく。この映画は単なる産業紹介にとどまらず、パンを媒介としてポルトガル社会の構造そのものを浮かび上がらせる。

パン作りに携わる職人の所作は、何千回も繰り返されてきた無駄のない動きであり、俳優では再現できない強度を備えている。オリヴェイラはそれを製造機械の反復運動と対比させることで映像にリズムを与えていた。画面に現れるのは子供から老人、囚人からブルジョワまで多様な人々であり、皆が等しくパンを口にする存在として並置される。

終盤、突如としてピカソの「ゲルニカ」とベルナール・ビュッフェの絵画が挿入され、パン＝生命の循環が破壊によって断ち切られることが暗示される。そこから映像はミレーの「種をまく人」を想起させるショットへと回帰し、個人の営みが国家の興隆を生み、伝統や産業革命を経て西洋全体の歴史を包括する視座へと広がっていく。ラストに映し出される風にたなびく麦畑の光景は、破壊を経たのちに訪れる静謐な希望と再生のイメージを示していた。個人的にはここ最近で1番面白かった作品。