YasujiOshiba

クライ・マッチョのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
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日本映画を見ようと思っていたら、これがネトフリにアップされていた。反射的にクリック。

イーストウッドは1930年生まれ。おいらの亡父より3歳年上。撮影時には91歳。背中を曲げて歩く姿に、かつての父を見る。膝の痛さを嘆きながら、これくらい大丈夫と寺の階段を登っていた。クリント爺さんも、車を転がし、馬に乗り、パンチを繰り出す。美しい女性を前に、もどかしそうに気持ちをうわずらせるところなんて、そっくり同じ。

そんな孫がいる年になったイーストウッド、ようやく年が追いついてきたと、かつて(1988年)まだ年が若すぎると断った企画の実現に動いたという。オリジナルは1975年に出版された N. Richard Nash の同名小説。そもそも映画スクリプトだったもの。どこからも断られノベライズして成功したのだという。

そんなこの映画、正直いって最初はスローな動きのイーストウッドを見るのがつらかった。展開もかったるかったし、説得力も今ひとつ、なんといってもスローなのだ。

けれどもそこに、マーク・マンチーナのアメリカンでノスタルジックなサウンドが入ってくる。スローなテンポが、それでかまわないのだと教えてくれる。ゆったりとしたテンポ、ゆっくり心を掴んでくるリズム。そして、言葉の通じない彼女たちに出会う。マリアの膝下で休み、悠久の天蓋のもとに、安らぎの呼吸が聞こえてくる。ああ、これか。これこそが、この映画に隠されたお宝なのか。

そしてやがて『Find a new home』の歌声が響くとき、なるほどそうだよなと、ふかく納得していることに気づくことになるのだけど、その歌を以下に訳しておこうと思う。それはこんなふうに歌うのだ。


主よ、これまで間違いを重ねてきました
けれど悪気はなかったのです
やがて太陽が丘の向こうに沈み
夜の長さがこたえるようになると
どの部屋もすっかりもぬけの殻で
枕の冷たさが骨まで染みてきます
きっと、これからだって遅すぎることはない
どこかに新しい家を見つけらるかもしれません

Lord, I've made my share of mistakes
But I meant no wrong
And when the sun sets on the hillside
The nights can be so long
Now the rooms are all empty
And my pillow's gone cold to the bone
Guess it's really never too late
To find a new home

彼女に出会うまでずいぶん時間がかかりました
手放すのにはさらに時間がかかります
あの良き日々は、最良の日々だったのですね
今だからわかるのです

Took a long time to find her
Even longer to let her go
And the good days, were the best days
I've ever known

厳しい時の足元は岩だらけだったかもしれません
けれども独りでいるいるよりはずっとマシだった
でもきっと、これからだって遅すぎることはない
どこかに新しい家を見つけらるかもしれません

And the hard times could be rocky
But they were better than being alone
Guess it's never, never too late
To find a new home

振り返ってみれば
わたしたちは若く強かった
自由になるために戦った
でも一線は超えることはなかった
なにが正しくなにが間違いかわきまえて
みんなで一緒になって頑張ったのです
けれども今ひとりで頑張っている虚しさ
きっと、これからだって遅すぎることはない
どこかに新しい家を見つけてもかまわないですよね

I look back to the days
We were young and strong
We fought for our freedom
But we knew the line
Between right and wrong
And we all stood together
Now it feels like I'm standing alone
Guess it's never, never too late
To find a new home
YasujiOshiba

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