ぽん

レミニセンスのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

レミニセンス(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

近未来SFなのにノスタルジックな雰囲気。地球温暖化の影響で水没しかけたマイアミはまるでヴェネチアのよう。「人々がそこで生きてきた証」もいつか消えてしまうのか、という哀切を感じさせる。「沈みゆく都市」は「消えゆく記憶」に呼応し、この物語の世界観を補強している。

冒頭、水浸しの道路を歩いてくる主人公が拾い上げるトランプのカードはクイーン。なるほど、これは自分の人生に君臨してしまう女王を見つけてしまった男の話なのですね。

主人公の前に突如現れる美女メイ(レベッカ・ファーガソン)の登場シーンがいい。「L.A.コンフィデンシャル」(1997)のキム・ベイシンガーを思い出した。

お客の記憶を蘇らせて追体験させるという脳内トリップ業(?)を営むニック(H・ジャックマン)。過去の記憶をさかのぼるという後ろ向きのベクトルなので、どうしたって内向的な話になる。陰キャな自分のツボです。ドツボです。

忽然と姿を消した女を探し続けるニックが哀れで切ない。偶然、他人の記憶の中に彼女を見つけると仕事そっちのけでその姿を追ってしまうなんて、もうカッコ悪すぎて見てらんない。そんな彼を叱咤激励しながら支える相棒のワッツがステキでした。(タンディ・ニュートン、タフでカッコイイおばさまになってた!)

彼女が消えた後、ニックはまた水浸しの道路で彼女のイヤリングを拾う。この「水の中からすくい上げる」という行為。これが記憶潜入のプロトコルとまた呼応しているのですね。記憶潜入(レミニセンス)はバスタブのような水槽に浸かって行われ、脳内から記憶をすくい上げる。

記憶再生のビジュアルも見どころで、ホログラムなんだけど8ミリフィルムのような淡い映像。やっぱりなんだか懐かしい手触り。そしてニックとメイの再会シーンが、もう泣けて泣けてしょーがなかった。「インターステラー」(2014)のレビューでも書きましたが、ネットやら携帯やらで何時でも何処でも誰とでも繋がれる時代なので、邂逅の美ってなかなか描けなくなった気がするのです。今って。なので、この時空間の隔たりを超えるアクロバット技は良かった。内容は全く違うけど、「ある日どこかで」(1980)なんて作品を思い出したり。

これから先、何かの折にふと思い立って、古い宝箱を開けてみるようにこの映画を観る、という事を繰り返しそうな予感がする、そんな作品でした。
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