特別ビー・ジーズのファンではないのだが、それでも多くの名曲は幾度も耳にしたことがあり、曲を聴くだけでも楽しめる作品。
大変真面目に作られたドキュメンタリーで、過剰な演出は一切なく時系列に並べられていて、私のような初心者でも全くおいて行かれることのない親切な内容。
そしてwiki等では分からない、当時の細かな感情の動きなどをインタビュー形式で描いていて、信頼度も高いし掘り下げも出来ている。
レコーディング風景やその音源、ましてHow Deep Is Your Loveの作曲時の音源などは超貴重だろう。
本当に素晴らしい曲が多く、バンドとしてではなく作曲者としてこの兄弟の功績がいかに大きいかが分かる。
作中でも言っていたが確かにレノン&マッカートニーに次ぐメロディメイカーだろう。
十代のころから兄弟三人でプロとして常に一緒に活動してきて、兄弟喧嘩での解散が一回だけってのは驚異的。ちょっと仲の悪い兄弟など毎月解散してもおかしくないのに、この仲の良さはすごい。
ディスコの大ブームに翻弄されてアンチ勢力に押しつぶされそうになったのだが、今振り返れば結局素晴らしい楽曲は何時になっても消え去ることは無いって事がよく分かる。
名曲に乗せ淡々とビー・ジーズの歴史を魅せてくれるのだが、ラストのバリー・ギブの一言に思わず涙が出た。
「弟たちさえ戻るなら成功なんていらない」
映画用にカッコつけてとか、リップサービスでとかではなく、心底そう思っているのが伝わる、感動できる一言だ。
幾度もの成功と挫折、そしてたどり着いた現在。世界でトップクラスのメロディメイカーと言われ成功を収めても、今はもういない兄弟に一目会えれば、すべていらないと言い切れる兄弟愛があってこその「名曲」だったのだろう。
へたなお涙頂戴感動映画なんかよりよっぽど泣ける良作。
余談。
誰でも絶対聴いたことのある超名曲「Stayin' Alive」
イントロを聴いただけで、塗料の缶を持ってカッコつけて歩きたくなるくらいノリの良いビートなのだが、今作で初めて知ってびっくり。
あれってドラムループだったんだ。
時代的にサンプリングとかループはポップスの中ではまだ使われていない時期なので、夢にも思わなかった。
なんか、旨い旨いと食べたイクラが、人工だったと分かったぐらいのショックはあった。