前々からクリップしっぱなしの短編を。
カフェで働く七星(今川宇宙)は絵を描くことは好きなのに、紙コップなど無くなるものにしか絵が描けない。人間関係の煩わしさを避けて生きてきた彼女はビルの屋上で宇宙と交信していた不思議な女性、月子(山谷花純)と出会う。キャバクラで働いているという月子から客とのメールの代筆を数日頼まれた七星は渋々引き受けるが、次第に月子の真実が明らかになっていく。
言葉にするのが難しいけどとても素敵な作品だった。
誰もが生きるのに精一杯な現代社会で、気を張って生きることの辛さや、素直になれない大人たちの悲しみに寄り添うような作品だと思った。
七星と月子は正反対の性格だけど、2人とも自分の本当の気持ちに蓋をして、傷付かないように、悲しみに触れないように生きてきた。
ふとしたきっかけで出会った七星にメールの代筆を頼んだ月子は誰かに助けてもらいたかったのかもしれない。
それはもうすぐ避けられない悲しみがやってくることを知っていたからかもしれない。
七星は大好きな絵を否定された悲しみを知っている。だから強がる月子の気持ちが痛いほどわかったんだろう。素直になれない複雑な胸中も、悲しみを避けるために引いた一線も。
そんな月子が大きな悲しみにぶち当たったからこそ、七星はなにもできないと思いながらも、その気持ちをカタチに残さずにはいられなかったのかな。
"人の言葉や行動なんぞなんにもならないことを私は知っている。何も動かせない"
"いいんだ、それで"
ほんの少しだけ希望と救いを見せるラストシーンがとてもよかった。
それでいて切なさが残るのは月子のタバコを吸うシーンの余韻だろうか。
今川宇宙も山谷花純もめちゃくちゃいい役者だなー!
今川宇宙は可愛いし、泣きそうに笑う顔がなんとも素敵。
山谷花純は年齢にそぐわない色気と屈託のない笑顔の向こうに哀愁を潜めるのがとても上手い。
ミュージカルパートの音楽も、エンディングも担当してる今川宇宙のバンド「今川宇宙の夢日記」がめちゃくちゃ気になる。