圧倒的物量増大の域を超え公開版と同じ素材すら別物にしてしまったこの作品は"別バージョン"や"本来の姿"という言葉で済ませてしまうのは勿体無い程の映像演出と丁寧かつ濃厚なストーリー展開で構成された正に《体験する作品》として降臨した。
ええ、もうコレは"降臨"ですw
もちろん数々のミラクルが起きたからこそ成り立った事だが、何より
「本当に"モノ"があった!」
からこそムーブメントが具現化されたのであり、何でもカンでもこういう事態になる事は必ずしも良い事ではない部分もある(実際過激派も居た)。
とはいえコレまた数々の不義理や対応の問題も相まって遂にGOサインが出たのはやはりHBOの存在であろう。
結果的に配信という媒体ゆえに自由度は格段に増し、やりたい事を全て詰め込める状況になった結果、追加投資からの追撮も含め出来上がった作品のランタイムはこのテの作品としては驚愕の242分!
連続モノのミニシリーズ化という案もあった6部構成(+エピローグ)は残しつつも、1本の映画としてロールアウト。
尺は長いがソコまで時間が割けない人も都合の良い所で切り分けて鑑賞も可能である。
…が、
個人的に『4時間は決して長くはない』と思う。
…イヤ、長いです。
時間としてはしっかり長いw
ただ、4時間ダレる事なく観れる。
(ワシはチョイとザック・スナイダーに思い入れが強いので長くないと思えるって事w)
ストーリー展開が鈍重なワケではないのだ。
そもそもザック・スナイダーという監督は
《バカ丁寧》なのだ。
そしてMCUの様にしっかりと個々のキャラクターを描く事が出来ずに急ぎ過ぎたヒーローアッセンブルをこの1作で補完/構築しているのである。
中でも当時から単体作品の話があまり聞こえて来なかったサイボーグに関して言えば今作のキーになるだけでなく
《もはや単体作品が内包されている》
レベルで、とにかく2時間に収めろという至上命題を出した配給会社に恨み節を言いたくなる程に素晴らしい。言わんけど。
(個人的には監督の不幸な一件以前から降板への不穏な展開が進んでいたと想像している。あくまでも個人的な推測。)
サイボーグだけではなく、単体作品予定は継続中のフラッシュもしっかりと感情移入出来る描かれ方と中盤のヤマ場/クライマックスにしっかりとした見せ場があり、作品のトーンを崩さない程度に抑えつつコメディリリーフの位置は保ってある。
単体作があり唯一安定して続編も作られたワンダーウーマン、劇場版公開後に単体作品が製作されたアクアマンもしっかりとこの作品内におけるストーリー性を増して補填。
バットマンとスーパーマンに関してはキャラクターの方向性を より明確にする為のプラス要素…という感じだろうか。
(まぁ元々主軸だしw)
そして公開版と違い世界観を より神話的でダークな方向に戻す為に個々のキャラクターが軽妙な軽口や皮肉を言ったり和ませるというコメディ要素は一切カットである。
ソレ以外にも展開上必要ない部分はオミットされている。
まぁ言ってしまえばジョス・ウェドンが追撮したモノは一切使ってないという事だが、ソレはソレで〈2時間に納める/時にコミカルで明るいトーンにする〉という至上命令に起因する物なので、ココに対して(のみ)はイチャモンを付けるつもりはない。
むしろそんな無茶苦茶な命令に応えた事は「ソレはソレで凄い!」って事も このバージョンを観れば分かる。
(撮影中の素行問題とショーランナーとして制作した物は別に考えたい)
各キャラクターの肉付けがしっかりとしている為にヒーローアッセンブルの要素が非常に楽しく何よりそのおかげで
『バトルシーンがしっかりアツい!』
何においてもココは重要!
ヒーロー物ですからね!!
ソレだけでなく敵側の描かれ方にも厚みが増し、ステッペンウルフに公開版の様に若干「VSヒーローチームには"器不足"」な雰囲気は無く、ガッツリ強いし しっかりヤバい。
更には《コレでまだ1番手》という怖さまで出して来た事。
「コレから先どんなの出てくんねん!?」
っていう気持ちは期待感にもなる(残念ながら続く可能性は…だが)。
敵の"恐怖感増し増し"っぷりにはラーメン二郎も舌を巻く程だ!知らんけど!!
とにかく増量が尋常じゃないのに展開に緩急はあるので飽きるポイントが無いし、このランタイムにしてはヒマ疲れが無い。
(パート分けしているのもプラスに働いているとは思う)
公開版と比べてみると分かりやすいのは何より画面のトーンであるが、他にも(分かった範囲だが)同じシーン/同じ素材でもカットするポイントや繋ぎの変更でかなり印象が違う所も多く、更にはスローモーションも増量だけでなくスピードも多種で躍動感が増している。
更にCG合成で「演者の素材は同じなのにやってる事が違いますやん!」なんて所もあったりした。
(まぁ言うてもこういうのはディレクターズカット等では"無い話ではない"のだが、今回は事情が違う)
観た事あるシーン、観た事あるカット、観た事ある展開なのに《別なモノを観ている気分》にまで持っていかれる。
同じ素材でもコレだけ変わってしまう、コレだけ変える事が出来る。
監督が変わるというのは(予想や覚悟は出来ていても)ココまで変貌してしまう事もあるのだな…と、感動や感心と怖さが同時に湧いた。
…ってか細かく書いてたらキリが無いのでもう本気で言いたい事を言うが、
ワシは以前からずっと少数派の《マンオブスティール/BvS賛派》、スーパーマンを心底面白いと思ったのもマンオブから という事もあり、完全にザック・スナイダー推しだったワケですよ。
ノーランはバットマン=人間なのでリアリティ重視、ザックの3部作はメタヒューマンで神話的と違いはあるが、このノーラン/ザックが創り出していた重い世界観やトーンだったからMCUと方向性が明確に違うDCEUも好きだったのです。
なので劇場公開版は「良くまとまったヒーロー物ではあるので貶(けな)すつもりは無いが、以降コレで続くなら今までと同レベルまでテンション上がらないし、DCEUにマーベルは求めていない」ってのが結論で、以降の単体作品も作品としては充分に面白くはあるけど、コレだったらMCUの方が好みな設定やキャラクターが多い…って感覚だったワケで。
実際にスナイダーカットが出ると聞いた時は狂喜乱舞したし、本国その他と同時じゃないと知った時には『早よやってくれ!!』言ってたし、初回盤Blu-rayの予約戦争に負けた時は心底落ち込んでしまったのですw
(異例の発売前で通常盤増産に歓喜!)
満を辞してのデジタル先行配信で飛びつきイザ再生…
『もう号泣ですよ。』
ストーリーやビジュアル、何よりザック・スナイダーの【ジャスティス・リーグ】を観れている事だけでなく、過去作への想いやら 推していたがゆえの心無い反論や「ヒーロー物はコミカルに!」の風潮にイラついた記憶や この作品が出る迄の経緯や、ナンか色々な感情が溢れちゃってもう
涙腺ダム決壊どころか"崩落"ですよ!
クラシアンじゃどうしようもないレベルですよ!
「建設会社呼べ!」級の崩壊です!!
観終わって内心で御礼 言ってましたよ。
泣きながら鼻かんで、結果4時間で200枚入りティッシュBOXの1/3無くなってましたよ。
…つい脱線してしまったw
ザック・スナイダーはいわゆるエンタメ作品を作る人である。
だが、プロデューサー等の意向を聞いてその依頼通りに作るショーランナーではない。
作家性が強いクリエイターなのである。
(ショーランナーがダメって話ではない)
ゆえに合う/合わないがあって当然。
エンタメ映画に限らず文芸作品やドラマ性の強い作品等にも作家性が強くディープな信者を作る一方で苦手な人も一定数出てしまう監督が居るが、ザック・スナイダーもそういうタイプなのだ。
ザック・スナイダーの作家性
それは《ビジュアル》。
つまり画面内の絵にバリバリ個性を出す人。
やたらとスローが多くスピードが多彩なのも画面内の絵で話を語るから。決してアクションシーンだけじゃない。
(ナンならアクションに関しては特にハイスピードと使い分けて緩急をつけている。)
ストーリーを画面の絵ヅラで魅せる。
こういう作家性だと思うのですよ。
しかもソレが濃い!濃厚!!
そういう人がブロックバスター作品で多数の人に触れられれば賛否も当然大きくなり、スマートでクレバーな大型作品と比べて苦手意識が出る人が多くなるのも ある意味で仕方がないとは言える。
(MCUがスマートでクレバーだからこそ"教科書だ!"みたいな状況でもあった)
だが、ソレだからこそ『良い!』と言う熱心なファンも居るという事。
そしてそのファンの声からスタートしてこの作品は遂に世に出て来る事となった。
だからこそHBOが配信という形で世に出したのはかなりデカい。
この映画、
ファンサービス=やれる事は全部やる
つまり
《いきなりアルティメット-エディション》
なんですよ。
仮にザック版のまま劇場公開されていたとしても4時間は下手打つと配給会社が潰れるレベルなので短くしたでしょう。
実際ディレクターズ・カットが多い人だし(全部じゃないけどw)。
となればコレだけ高評価が多かったとは限らないという予想も立ってしまう。
紆余曲折あまりにも色々な事があり過ぎた作品だからこそ、そして"ファンの声に応えたかった"からこその4時間2分なのではないか?と。
ゆえに(単語がチョイと悪いが)
『映画として考えると反則技』でもある。
その反則技上等で、観たいと声を上げた人達に贈った作品なのではないだろうか。
確かに長い事自体がシンドいならコレは素直にシンドい。
スローが多い事がノイズに感じるなら間違いなくノイズだらけだ。
そんな事は分かっている。
本人もコレから先DCEUに絡む事がないだろうと言っていた。
だからこそザック版スーパーマン3部作の〆(シメ)になるこのバージョンが出せる事になった時に『自分のやりたい事を全部やる!』という方向に振り切ったのではないだろうか。
もちろん「ファンのムーブメントが起因だとしても、受け取る側が全員ザック信者なワケじゃない」という事も分かった上で。
企画が頓挫したベンアフレック版バットマンに対する振りさえ追撮でありながら入れているのもそういう気持ちからではないかと思うのだ。
そして何より 急ぎ過ぎたDCEUのヒーローアッセンブルをしっかりと描き切った事。コレを(これから先が無いとしても)やり切った事が素晴らしい。
↑長いランタイムでも飽きないのは正にココだと思う。
コレを書いてる時点ではまだデジタル配信/販売が始まって間もないので高評価が多いのだが、もっと広まれば低評価は増えて来るだろうと思う(何せ濃厚な監督だからねw)。
だとしても現在 高評価がココまである事に実は驚いている。
驚いているが…まぁぶっちゃけ とても嬉しい!
実際 相当ザックの作品の中でも相当出来は良い。
そして今のザックの想いがたくさん詰まっていると思う。
(にしてもエピローグ前半のナレーション、コレは追撮ではないという(確定かは分からないが)情報を見て、コレを撮ってる時にあの不幸な出来事は何と重い事かと…)
決して万人向けではない。
だがヒーローアッセンブルムービーとしては間違いなく上質。
6パートとエピローグ、そしてオープニング&エンディングで構成されているので、『分けて鑑賞もアリ』と 上でも書いたのだが、お役に立てばと思い ざっくりだが測ってみた。
オープニング約9分
PART.1 約28分
PART.2 約32分
PART.3 約42分
PART.4 約31分
PART.5 約31分
PART.6 約41分
エピローグ 約19分
エンディング 約9分
もし2回に分けるなら真ん中で大体2時間×2になるのだが、PART.4までとPART.5以降で分けると時間は少しイビツになるが前編にもヤマ場が来て終われるし、後編もPART.5には間を空けて落ち着いたテンションを速攻取り戻すパワーがあるので個人的にはコレをオススメしたい。
(21/6/8追記--後に"ザック・スナイダー監督本人もPART.4で休憩をオススメしていた"とtwitterフォロワーから聞いたので上記より強めに"是非"と言わせていただきます!w)
拒絶反応が無いのであれば長尺な事も含めて是非1度体験して頂きたく思う次第。
とにかくワシはノーランとザックでDCヒーローにハマったクチなので、何よりもこの作品が発表された事にひたすら感謝である。
と同時にザックのDCEUは終わりでもあり(極めて薄く復活の可能性が無いワケでもないが)、ある意味MCUでエンドゲームを観た時みたいな虚脱感も無いと言えばウソになる。
普段にも増して長々と読み難い駄文を連ねてしまったが、ソレぐらいワシにとってエモーショナルな作品だったという事でお許し頂きたい。
間違いを書いているかもしれない事も個人的な感想という事で重ねて御容赦の程を。
最後に一言。
満点だよ!!
決まってんだろ!!!