Inagaquilala

狼をさがしてのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

狼をさがして(2020年製作の映画)
3.5
日本の人たちがすっかり忘れている事件に、韓国のドキュメンタリー監督が関心を持ったことに、まず驚く。1970年代半ばに起きた連続企業爆破事件。「東アジア反日武装戦線」と名乗ったテロリストたちのどこに興味を抱いたのか。2000年代初頭に大阪の釜ヶ崎で日雇い労働者を取材したキム・ミレ監督は、まずその問いからこの作品をスタートさせている。すでに半世紀近くの時が過ぎたなかで、犯行グループや関係者の消息をたどりながら、フィルムに収めていく。それだけでも、正邪を越えて、歴史的な価値はあるように思う。

ただ、同時代にこの事件を見聞してきた人たちにとっては、少々、物足りなさを感じることも事実であろう。あの時代に視点を置き換えることによって、判断されるべきものもあるような気がする。また時間の経過があるためか、事件に対するアプローチが、表層的なものとなっている感じも否めない。とはいえ、粘り強く関係者にあたり、貴重な証言を集めているのも事実だ。その後、日本では1990年代にもさらに凶悪なテロ事件が起きているが、そのあたりとの照らし合わせを詳細にすることで、より普遍的なテーマにも迫れたような気もする。キム・ミレ監督の問いかけがさらに続くことを期待する。
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