ブタブタ

狼をさがしてのブタブタのレビュー・感想・評価

狼をさがして(2020年製作の映画)
4.0
『袴田事件』の袴田巌氏が釈放された時、長い監禁の結果による拘禁反応で精神を病んだ姿を特集番組で見てショックを受けたのを覚えてる。
同じく長い監禁を受けた(とは言っても年数その他単純に比べてもいけないかも知れないが)東アジア反日武装戦線〝大地の牙〟メンバー浴田由紀子氏は懲役20年の刑を受け刑期満了の2017年に釈放された。
驚いたのは浴田さんのそのとても長い服役生活を送っていたとは見えない若々しさと溌剌とした元気さ。
浴田さんを娘の様に思っていた支援者でもある女性宅への「帰宅」も「ただいま~」って久しぶりに帰省したみたいなノリだし、その女性と「ヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♪」って抱き合って、涙の再会とか湿っぽさとは全くの無縁。
今も講演活動や絵本作家としてデビュー等精力的な活動を続けてるという。

浴田由紀子氏は最終陳述書で企業爆破に始まるテロは間違いだったと、社会に対する革命とは武器や暴力ではなく、ましてや一人のリーダーが皆が与える様な物ではなく人間ひとりひとりが手を取り合い仲間を増やして、敵と戦うよりも皆が味方となる事だったと語っている。
その通りだと思う反面それって現実には不可能だと思う。

フィクションの世界では武力ではなく人間の精神の進化によって革命が起こされる物語は多々描かれている。
代表的なのは勿論『ガンダム』のニュータイプね。

三菱本社ビル爆破に始まる日帝企業をターゲットととする連続爆破テロは多くの死傷者を出して結局、東アジア反日武装戦線メンバーの逮捕や自殺、海外逃亡によって終結する。

彼等をこの様な行動に駆り立てたのは戦前戦中の中国・朝鮮への侵略と更にそれ以前の琉球・アイヌモシリへの侵略と簒奪。
そして中国人・朝鮮人強制連行、強制労働の日本が犯し未だ反省も正しい検証も一切行われていないこれら「日本が闇に葬った(と思っている)侵略・犯罪行為」
日本はあの戦争に負けて「東京裁判」てアメリカに御都合による上っ面を舐めただけの茶番によって真に裁くべき戦争犯罪(=敗戦国だからだけど)を誤魔化してしまったせいでここまでグダグダな戦後になってしまった。
ナチスを裁いたニュルンベルク裁判とは雲泥の差である。
真に裁くべき者達、日本が戦争に突入する事で得をし儲けた連中即ち三菱等の財閥。
そして研究成果をアメリカに引渡す事で刑一切を免れた中国大陸での細菌生物兵器開発研究機関等が裁かれる事無く其れを継ぐ者達は今ものうのうと生き続けているという事。

途中ははしょりますがその結果が今のこの日本なのではないか。
「強制労働」は「派遣社員」に、「強制連行」は「外国人研修生」に極端な話、呼び名が変わっただけで実情は何も変わっていない。
そして今この未曾有のパンデミックの中で東京五輪というインパール作戦に匹敵する愚行に国民を総動員しようしている(まあオリンピックなんて中止に決まってるけど)

信濃川発電所での朝鮮人強制労働と虐殺、更に強制労働に対して蜂起した中国人大量虐殺等どれもこれも絶対に日本の学校の教科書には載ってない事ばかり。

東アジア反日武装戦線に対しての「彼等のやり方は確かに間違っていたかも知れない」とか「暴力やテロは決して許されないけど共感する部分は多い」とか、そういう御為倒しの意見は嫌いだし意味無い。

「不寛容に対しても寛容であるべきか?」の「寛容のパラドックス」って、これって「多数派」=権力者、加害者、いじめ側が利する論理であり「被害者、いじめられる側の逆襲」を封じ込める為の詭弁でしかないと思う。
国家という強大な「いじめる側」に対して「いじめられる側」が暴力や武力を持って立ち上がった時それは有無を言わせず「テロ」「犯罪」となる。
口も言ってもわかんない奴はやっぱりぶん殴るしかないのでは。
例え勝てない事は分かっていても。
例え負けてもメッセージは伝わる。
しかしこれらを美談にしてはならない。
テロも武力革命も常に犠牲となるのは大抵の場合一般市民であり権力や国家を転覆するには至らない。
だからこその革命であり、これら全ての出来事に対して国家が行っている様に蓋をするのではなく徹底的な検証が必要。

千葉市美術館での展覧会「1968年の激動の時代」を見に行った。
日本の全共闘や連合赤軍、そして爆弾闘争。パリの五月革命や中国では文化大革命。
この時代の「世界同時革命」とも言えるテロルの季節。
国家権力を取り替える、そこから退かすには話し合いで退くわけはないし武力による実力行使が必要でその過程が「革命」であり即ち成功した革命とは既に革命ではなくそれは既に「戦争」だと思う。

京都大学教授が語った「暴力や殺人は国家が独占しており、個人(国民側)が持つ暴力は少ししかない」
国家による暴力により日常的に殺人は行われている。
戦争や死刑といった事だけでなく多くの国民に苦役をかし、自殺率がこんなに高い日本は異常。
ここでもし今、爆破テロが起きたら連日ワイドショーで犯人を叩くに違いない。
国家による殺人は可視化されず個人による殺人は可視化される。

長くなって来たな…(๑¯ω¯๑)

極左テロやアナーキズムに関する人物や事件をエンターテインメントの世界で作品にしてるのは矢張り大塚英志。
「天皇」という近代日本の現人神を言わばラスボスに起き展開されるフィクション。
その数多のフィクションでさえほとんど描く事が不可能な事が嘗て実行寸前であった。
それは天皇ヒロヒト暗殺計画「虹作戦」
那須御用邸への御召列車ごと天皇を爆殺するというもの。
因みに渡邊文樹監督『腹腹時計』の元ネタでもある。
この日本の最大のタブーとも言える戦後民主主義の実体を持った象徴とも言える人物を殺そうとした事。
もし之が実行され成功していたとしたら。
東アジア反日武装戦線及び実働部隊〝狼〟のリーダー格である大道司将司はもはや平将門や菅原道真を超える日本最大の「悪霊(あくれい)」「祟り神」となってフィクション・ノンフィクション両方の世界で永遠にその名を残したのではないか。

彼等の革命によって倒すべき敵として設定されたのは「資本主義のブタ」「国家に寄生し血を吸う者達」等であるが之らの論理は通用しないし既に破綻している。
この戦後民主主義国家そのものがシステムとしてそれら嘗ての寄生虫によって運営管理され更にはもうその手を離れてシステムそのものが自己を作り上げている様な気がする。
其れは既に巨大で邪悪な神のようなシロモノで革命や闘争ではどうにもならない。

あーそれから『閃光のハサウェイ』延期になったー(;∇;)
『ガンダム』における最大最悪の敵は資本主義の究極とも言える企業「アナハイム・エレクトロニクス社」
正にAE社は国家をも超えたそれ自体が意志を持ちいつまでもいつまでも人類に戦争を科す邪悪な神のような存在で、其れを打倒するのはニュータイプによる人類の革新しかない。

長い…( ̄▽ ̄)
ブタブタ

ブタブタ