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Arc アークのnatsumixのレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
4.0
本編を観るとこの色鮮やかなポスターの本当の意味がわかって完結する作り。

物語は、「プラスティネーション」という架空の技術と、それを発展させて人間の不老不死化が実現された世界が舞台で、架空の物語でありながらも舞台を日本にアレンジして石川慶監督ならではの鋭くも優しい視点が冴えるドキュメンタリータッチなシーンもあるから親近感も持てるという、とても不思議な気持ちになった。

このプラスティネーションは遺体にエンバーミングのような処理を施して、仕上げにマリオネットのように踊って操る事でまるで生きているかのようなポーズを造ってそのまま永久保存する、という技術なんだけど、寺島しのぶお姉様と芳根京子ちゃんの舞がめちゃくちゃ綺麗で、そういう美術や舞踏、世武裕子劇伴というアート的な美しさがまずあって。

物語が進むにつれて格差社会などのテーマも取り扱ったりして、後編の舞台となった架空の島では、時が止まっているかのようにノスタルジックな風景の中で、過去と現在と未来が混在するエピソードがその時間軸を行ったり来たりしながら描かれていて(まさに円弧と書いてアーク!)、観終わった後は自分の人生観や死生観がちょっとひっくり返ったなー。

死に抗う事と死を受け入れる事。

これは誰しも1度は考えた事があると思うしきっと答えは一生見つからないと思うんだけど、この命題の答えを探しながらこれからの日常を生きるにあたって、この作品との出会いで彩りは確実にひとつ増えたし、心が豊かになったような気がしている。
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