不老不死の処置を受けた主人公の女性が、若さを保ったまま100歳を超えて生きていく様を、年代を追って描いた作品だが、前半のアートフルなビジュアルイメージに貫かれたシーンと、後半のモノクロで描かれる年を経て主人公が暮らしていくシーンに、かなりの落差を感じた。作品の完成度という点では、逐次的に時間を追って描いていくよりも、回想形式をとったほうがよかったのではないかと思った。
前半の不老不死にまつわるシーンは、なかなか魅力的な映像が続き、正直かなりの期待をもって観ていたのだが、後半に入ると、急にその豊かなイメージは萎んでしまい、単なる「謎解き」の場面になっているような気もした。映像業界では注目されている作家のケン・リュウの短編小説が原作ということで、かなり期待していたのだが、物語が終息に向かうにしたがって、ありきたりの物語になってしまったのが残念だ。前半と後半で2つの物語を追いかけたために、クオリティにムラが出てしまったように思う。「愚行録」と「蜜蜂と遠雷」を観ているが、石川慶監督との相性が、どうもよくないのかもしれない。
