このレビューはネタバレを含みます
最近ほとんど映画館に行けなかったのを、これだけは絶対と思い、行きました。
素晴らしかった。撮り方も小説の脚本化も個性的で、首藤凛さん、これからも活躍して欲しい。
例えば、暗めの部屋、窓からさす光の逆光の中で主人公の愛が美雪を見つめる場面。暗い情念が恐ろしいし、魅力的に見える。山田杏奈さんはいつもの鋭い視線を見せているだけかも知れないけど、光の当て方や撮り方によって、出てくる情感が全然変わるんですね。
もともと独白(心の声)だらけの原作を映画化するにはいろいろなやり方あるはずですが、演出でよく伝わるようになってました。
原作同様、手に汗握るような濃厚な映画でひとときも緩むことがなく、原作同様「いっぱいいっぱい」になってしまいました。
**追記:** 以下は、映画そのものの感想ではなくて、小説と映画を併せた感想。
主人公の木村愛は、これまでは、自分に言い寄ってくる男どもを軽蔑しつつ適当にあしらっていたに違いない。ところが、自分がいざ本当に恋をしてしまうと、どうやって彼の気を引こうかと小賢しい手練を弄しては失敗し自己嫌悪に陥る。自分の情熱に翻弄され歯止めが効かなくなり、自分も他人も傷つけてしまう。自分自身ではどうしようもなく恋心に翻弄される。
僕は木村愛に共感してしまいます。実際の自分は抑制が効きすぎていてあんなに自分の感情に振り回されることはないのですが、気持ちは痛いほど分かる。自分も同じように行動してしまうかも知れないと思う。好きな人の好きな人を支配したいという欲望もよく分かる。
身勝手で他人を平気で傷つける木村愛のような人間は嫌いだというのは、同世代の感じ方かも知れないと思います。そういう意味では、西村たとえも新藤美雪も(当たり前ですが)子どもです。でも、大人の読者としては、あそこまで自分の恋心に翻弄されてぐじゃぐじゃになってしまう木村愛を愛おしいと思う。