NG

ひらいてのNGのネタバレレビュー・内容・結末

ひらいて(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


愛ちゃんみたいな女の子を「最低」「クズ」だと思える人生送りたかった。わたしはどうしたって愛ちゃん側のにんげんだから、じぶんがどう振る舞ったら他人をじぶんの思い通りに動かせるか完璧に理解したうえで打算なんてなにもないように振る舞い、じわじわと相手を思い通りに動かす(追い込んでいく)愛ちゃんに感情移入してしまう。
愛ちゃんのように欲しいものは他人から奪ってでも手に入れてやるという気概のあるにんげんはじぶんの欲のためならじぶんも他人もどうなったっていいと思っているから結果的にじぶんでじぶんを傷つけることになるし、周りのにんげんも平気で傷つける。だから、結局なにも手に入れられないし、誰も幸せにならないんだよね。
周りの幸せを羨んで妬んで悪意を持って傷つけて自己嫌悪に陥るのわたしも100万回やっているから、よくわかる。
気が強くて性格が悪いことなんて、誰に言われなくてもわかってるし、じぶんだってそんなじぶんがすきじゃない。

「"気が強い"って言葉、女にしか使わないね」

じぶんの好きな男の子だけがじぶんの思い通りになってくれないんじゃなくて、わたしのほんともうそも全部見抜いてくれそうだからすきなんだよ。きっと。
愛ちゃんみたいな女の子がたとえくんみたいな男の子を好きになるの、よくわかる。

愛ちゃんはたとえに恋しているというよりたとえになりたいんだと思う。わざわざ美雪に近づいたのもたとえを理解したい、たとえになりたいがベースにある気がする。
心の底で見下している同級生や先生たちにちやほやされることを良しとしている、他人を拒絶しない、孤独を選択しないじぶんへの軽蔑と孤独を選択できるたとえへの憧れ。根本的にはじぶんとおなじであるという仲間意識。
愛とたとえは正反対なようでいて実はよく似ている。
愛ちゃんはたとえの父であり、たとえが抑えつけているたとえ自身でもあるから、たとえは愛がきらいだし、きらいなのに見捨てられない。
折り鶴でできた桜を蹴るシーンではじめてたとえが愛ちゃんをまっすぐみつめるのは、たとえが自分自身の弱さと向き合う勇気を持ったからではないだろうか。

あんまり山田杏奈ちゃんがカースト一軍女子を演じる想像がつかなかったけど、表情や視線の動かし方、身振り手振りが一軍女子のソレでちゃんと性格悪くてすきだった。トロピカーナを飲みながら死んだ目でたとえと美雪を眺めるシーンが強烈。
たとえ役の作間くんは彼をみつけたにんげんにじぶんだけが彼の良さに気づけていると思わせる絶妙なビジュアルが役にぴったりでよかったな。演技慣れしてなくてちょっと棒っぽいところも他人との会話慣れしていないたとえには合っていたように思う。
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