じゅんふう

ひらいてのじゅんふうのネタバレレビュー・内容・結末

ひらいて(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

原作が大好きで何回か読み返している作品。映画としては独白がないのと展開が少し変わることで、特に後半にかけてが似て非なる別作品になってしまっているような気がする。それでも全体的な空気感やヒリヒリとした感じは映像化としての正解例であり、同時に作品の解釈や抽出の難しさ、複雑さを感じた。もう一度読み直したい。
原作はある意味の気持ち悪さの線を超えるか超えないかのギリギリの低空飛行みたいなおっかなさを感じる一方で、この映画は映像美も含めて少し美しくまとまり過ぎかなとは思った。
それでも情動や、歪みきった心情を見事に演じきる山田杏奈さんの怪演は素晴らしいし、ある種の気味悪さ、劇中のアイドルソングさえも不気味に聞こえる作りには熱情を感じました。

すごくいい映画ですが、やっぱり綿矢りささんの文章の煮えるような心地悪さ/良さを映像で表現するには難しいんだなと感じました。独白が多めでも許せたとは思う…。 原作を知らない人から見たら愛はいきなり突飛な言動に出るように映って理解されづらいかも知れない。わかりやすいぐらい愛の内面に迫る演出があっても親切だったかとは思う。難しいですね、複雑な感情の奔流を映像化するのって。

たとえの父親の絶妙に嫌な感じが良かったです。
露骨すぎない嫌悪感の出し方に監督の手腕を感じました。

後で調べて知ったのですが、劇中の文化祭で踊るアイドルソングはこの映画のために書き下ろされて、しかもプロデューサーの娘や友人が歌ってるという完全なオリジナルということで、少しだけしか流れないのがもったいないぐらいクオリティの高い曲で驚きました。劇中の挿入曲や演出、色使いがとても心地よかったです。
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