青山

カビリアの夜の青山のレビュー・感想・評価

カビリアの夜(1957年製作の映画)
4.3

付き合っているはずの男に金を奪われ川に突き落とされる女性。流される彼女を見つけた人々が助けるが、意識を取り戻した彼女は礼を言うでもなく悪態をつきながら家に帰り、家でも悪態をつきまくりながら夜を彷徨う......。

この冒頭に、思わず「なんじゃこの女は??」と戸惑いと反感を覚えますが、実はその時点でもうヘデリコ・ヘリーニの術中にあったのです......。

彼女は娼婦のカビリア。
本作は、彼女が男に騙され嘲笑われながらも生きていく姿を描いた映画です。
演じるのはフェリーニの奥さんだったらしいジュリエッタ・マシーナ。本作で初めて見ましたが、素晴らしかったです。ぎょろっとした目と、めっちゃ動く口元。決して美人ではないですが、その表情の激しい動きを見ているとこっちまで嬉しくなったり悲しくなったりしちゃうような魅力がありました。
彼女はとにかく純粋。だから男たちに辛い思いをさせられることばかりですが、それでも泣いて、悪態をついて、また生きていく。だから、冒頭ではなんだこの女と思っていたのに、気づいた時にはそんな彼女の虜になってました。

で、それだけに後半は先が読めてしまってフライングつらみを味わい続けたあげくお約束通りそのつらみは実現するのですが、それでもまだ歩いていく彼女の姿には人生を肯定はしないまま受け入れる強さを感じて泣けてきちゃいました。

とまぁ、全体の感想はこんな感じ。ただ、そんなことより本作は細部に宿るエモさが見どころ。俳優について歩く時の嬉しそうなカビリアの可愛さよ。舞台の上でロマンスを演じる彼女の美しさよ。マリア様を詰る切実さよ。そして、ラストの2人の表情よ......。筋だけ読んだらなんてことないお話かもしれませんが、そういう場面場面の良さがえげつない傑作なんです。だから文章で良さをうまく伝えられないのがもどかしいです。とにかくみんな観て!
青山

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