ノラネコの呑んで観るシネマ

偶然と想像のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.6
絶好調の濱口竜介による三話オムニバス。
これも素晴らしい仕上がりだ。
第一話「魔法(よりもっと不確か)」では、タクシーで友人から“最近出会った人”とのノロケ話を散々聞かされた古川琴音が、彼女と別れた後意外な場所に向かう。
第二話「扉は開けたままで」では、渋川清彦の芥川賞作家の教授を、森郁月の学生が、ハニートラップで陥れようとする。
第三話「もう一度」では、高校の同窓会で故郷仙台を訪れた占部房子が、ずっと会いたかった懐かしい人を見つける。
どの物語も、半分の意志と半分の偶然が、二人の人物を結びつけることから始まる、ウィットに富んだ会話劇。
二人の間にあるすれ違いの隙間を、登場人物の想像する力が埋めてゆく。
なるほどタイトル通り、人生の一ページが帰結する先を、「偶然と想像」のバランスが決めてゆく構造。
どれもよく出来た短編小説を読んでいる様な感覚で、この作家の持ち味が上手く出ている。
一編が短過ぎず長過ぎない40分程度。
どの作品も、同じ基本構造とお約束を持っていることで統一感もあり、短編単体としても、作品集としてもすこぶる満足度は高い。