紅の猫

偶然と想像の紅の猫のレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
4.0
短編3本のオムニバス映画。偶然から物語が始まる。『魔法(よりもっと不確か)』『扉は開けたままで』『もう一度』の3本です。

偶然と想像によって人物たちが自分でも気がつかなかった心情に気がついていく。
どの作品も台詞が平板に話されていく。感情を込めないことによってテキストの意味と意味が対応し組み合わさることによって心情とドラマが浮かび上がる。『扉は開けたままで』の中で瀬川が、言葉を組み合わせて意味を作るみたいなこと(もっといい言い方だったと思うが忘れてしまた。)を話していたが、それを監督自身が映画で表現している。「ドライブ・マイ・カー」では稽古風景を描くことでその方法論を明かしているがきっと同じような制作過程を経たのだろう。
この特徴的な話し方をする人物は心に抱えているものがある人物だけで、『魔法(よりもっと不確か)』に出てくるつぐみはナチュラルに話していたことから誰のドラマなのかを台詞の話し方でも明示していた。シチュエーションの作り方によってもテーマを語れていていた。

核心部分はワンシチュエーションと台詞のやり取りでドラマと心情を掘り下げていく。テキストの強度が高くないと出来ないことで、滝口監督は脚本家として書ける人なんだというのがよく分かった。
台詞劇としての緊張感と重さを、思わず笑ってしまうくらいの偶然で緩和し、想像でカタルシスを生み出す構成も巧み。

良い映画でした。
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