寝木裕和

対峙の寝木裕和のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
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『 人は、人を、赦せるのか。 』
…というテーマを、こんなにも静かに、しかしながら生々しく描いた作品があっただろうか。

ほぼ、ある一つの部屋に閉じこもった4人の会話のみで構成された作品。
… にも関わらず、弛れることなく、それどころか緊張感を保ったまま、登場人物それぞれの悲哀、絶望、喪失感、やり場のない気持ち… に、心震わされながら、スピリチュアルとも言えるラストシーンに至っては感泣を禁じ得ないのは、緻密に考えられた脚本の妙に尽きると思う。

俳優でもあるフラン・クランツは、この監督デビュー作品で、すべての無駄なものを削ぎ落とした、ある意味ストイックの極地ともいえる方法で撮っているのだが、(回想シーンや映画的エフェクト、音楽での演出一切無し。)それは、そうすることによって、残された事件の被害者家族、加害者家族へ敬意を表したかったのだそうだ。

そのことによって、観ているものの心を最後まで震わせ、そして観終わった後もずっと考えてしまうような、崇高な作品に仕上げることに成功している。

その、素晴らしい脚本を演じるベテラン俳優4人も見事だった。
寝木裕和

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