瀬口航平

対峙の瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

対峙(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

凄かった。
自分の息子を殺した相手の親という、赦すことが極めて難しい相手に対して、考えうる限り最も憎しみを抱き、最も自分たちとは対極にいる相手に対して、この作品は、赦せるか?ではなく、赦すこともできるのではないか、ということを言ってくれてると思った。

誰も、心の奥底では誰かを憎んでいたくはないと思う。赦せるもんなら赦したい、そして楽になりたい。でもそれをしてしまったら、死んだ息子への愛が失われるのではないか?でももし、愛が失われないのなら?人はそこまで憎しみを抱く相手に対して、本当に赦すことができるのではないか?

どんな風に書き上げたかはわからないけど、きっと考え得る限り多くの障害を脚本に書いて、最後の赦しに至るまでの道のりをめちゃめちゃ大変にしたような気がする。おれだったら書いてる間、本当に赦しの結末に行くのか不安になるけど、きっとそれでも赦しに向かえたという奇跡、があったのかな、、とかちょっと大げさに考えてみる。

加害者たち、私達とは違う、真逆の存在ではなく、子を亡くすという同じ悲しみを抱いた同じ人間だという理解、体感、に至るまでは多くの障害が劇中あったと思う。最終的には彼らを責める手立てが無くなったんじゃないか、と思ったし、間違ってないようにも思うけど、ちゃんと解析したい。
DVD出たら買うし、配信でもいいのでそのときは、文字起こしして、一つ一つ丁寧に赦しまでのプロセスを辿りたい。
人と人が憎しみ合うことで多くの争いが生まれてる現代において、そのプロセスは非常に価値のある時間になるんじゃないかと思う。

最後、赦すわってなってからの展開蛇足になるんじゃ、と思ったけど、蛇足じゃなかった。。四人以外の人たちの前であの告白とそれに対する抱擁の瞬間を描いたのは何となくありな気がするし、被害者側の旦那のほうにも最後、賛美歌のおかげで解放が訪れたのはとても良かったと思う。もちろん加害者側の奥さんの告白による解放も。

あと、観る前から他の人のレビューで、赦すわ、ってセリフがあるのは知ってたけど、本当は赦したくない、赦したくないけど頑張って赦そうとしてる感じを想像してたけど、そうじゃなかったの良かった。本当に赦してた。だからこそ先に進めるんだな。
瀬口航平

瀬口航平