教授

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドの教授のレビュー・感想・評価

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どことなくラブコメ感がある作劇ながら、描いている内容はなかなかハード。
訳あってアンドロイドとの間に恋愛関係になるための実験に参加することになった学者のアルマ。
最初から懐疑的ながらも、やがて恋愛感情が芽生え(なくても、そこに関係性が生まれ)、関係が深まれば深まるほど、その与えられた3週間という時間のその後は苦しくつらい別れが待っていることは容易に想像できる。
その設定からもかなり、胸が苦しい。

そして、そもそもの抱える孤独感から「伴侶はいらない」と他者を拒絶しがちで、老いていく父親を抱えて、仕事も上手くいっているとは言い難い状況。

そこに突きつけてくるものは、僕たちの現実ともリンクして襲いかかってくる。
この現代の「孤独」と「老い」の問題。
人はひとりで生きてひとりで死ぬということは、真実だとしても、なかなかそれを容易に受け入れて、達観するのは本当に難しい。
そして、実際にはひとりでは生きられないし、ひとりで死ぬことも容易ではないのだ。

そして、本作の終盤で結び付けられる「人間の孤独」をある意味で全て受け入れるアンドロイドがいたとして。
その存在が人類全体の「進歩」に鑑みた時は、孤独を癒すアンドロイドの必要性などないのだ、と結論づけたとしても。

人間はいくら「プログラム」された存在だとしても、そこに「感情」を見出した他者との関わりも求め続けていくわけだし、そこに自らの「孤独」も救済される余地がある限り、それを手放すことはできず、また強く求めてしまう矛盾が描かれている。

物語は問いかけも結論も導くことなく、その矛盾を抱えて、混乱しながらも、矛盾したり、正解のない問題に対峙しながら前に進むもの、というのを示してもいて。
テーマに対しては誠実に向かい合っているとも言えるし、誰も明確な回答が出せるものでもない、という曖昧さこそが、まさに人生そのもの、といった感じで味わい深かった。
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