狐のろうそく

イントロダクションの狐のろうそくのレビュー・感想・評価

イントロダクション(2020年製作の映画)
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全部で3つのパートに分かれているが、各パートの時間の飛躍が大きいのでちょっと分かりづらいかもしれない。がこの説明を排除した叙述がホン・サンスの持ち味で好きである。そして過去の映画あるいはこの後の映画と主人公を変えながら微妙に連作になっているのも良い。
「逃げた女」のキムミニのその後の行方らしきものを含みながら新たな主人公ヨンホの失恋物語でありさらに「あなたの顔の前に」へと続く物語。この映画もロメール緑の光線を意識しているようでもあるが、主人公ヨンホはその自己へのこだわり方など漱石の一連の主人公たち(たとえば彼岸過迄の須永や行人の一郎)にどこか重なるような気がする。
世の中から取り残されたような寂しさがラストシーンに凝縮される。
救いは母がお膳立てした舞台俳優との面談にのこのことついてきた友達のやさしさだろう。なんていいヤツなんだろう。彼はある意味ヨンホの分身でもあるか。そういう設定の仕方がホン・サンスの才気なのだろう。
そして一見意味のない会話が生きている。「お母さんの泊まっているホテルは大きいな」