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白い牛のバラッドのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
3.5
夫を冤罪による死刑で失ったシングルマザーの姿を通し、イランにおける死刑制度の是非と女性の生きずらさを描く。
監督は、脚本、主演も兼ねるマリヤム・モガッダムとパートナーであるベタシュ・サナイハ。
原題:(ペルシア語) قصیده گاو سفید(白牛への頌歌), (ラテン文字転写)Ghasideyeh gave sefid、(英)Ballad of a White Cow (2020)

イランの首都テヘラン。
1年前に夫のババクを殺人罪による死刑で亡くし、牛乳工場で働きながら耳の聞こえない幼い娘ビタ("コーダ"であるアヴィン・プルラウフィ)を育てるミナ(マリヤム・モガッダム)は、裁判所から呼び出しを受け、実は真犯人が別に見つかったと知らされ、愕然とする。
遺族に高額(2億7千万トマン)の賠償金が支払われると言われるが、当時担当した判事からの謝罪は一切ない。
やがて、夫の友人だと名乗る男性レザ(アリレザ・サニ・ファル)が訪ねてくる。夫から借りていた金を返しに来たのだという。
レザの親切に、やがて母娘とレザの3人は家族のように親密な関係を育んでいく…

やがて真実を知ったミナ、この母娘の未来は…

~他の登場人物~
・ババクの弟( プーリア・ラヒミサム):ミナの金を狙う父に同調し同居を迫る。その後父は子どもの親権を求めて提訴する。
・レザの同僚(ファリド・ゴーバディ)
・ミナの隣人でアパートの家主の妻(リリ・ファルハドプール):レザを部屋に入れたためアパートから追い出す。

「モーセは民に言った。"神は牛を犠牲にせよと命じた"と。
民は答えた。"我々を嘲るのですか"と」クルアーン ―雌牛の章ー

白い牛とは、冤罪で犠牲になった人たちのこと。
厳格な死刑制度が維持され死刑執行数が飛び抜けて多いイランで、モハマド・ラスロフ監督の「悪は存在せず」に続き、同様のテーマを、女性の生きずらさの視点で描いた。
本国イランでは2020年2月の国際映画祭で3回上映されたが、その後、検閲により上映禁止になっている。
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