コロナ禍のルーマニア市街地を練り歩く(かなり長々と町の広告などを執拗に映す)第一部は退屈だが、コロナのせいかそれぞれがピリピリしている様子が面白い。見ず知らずの他人同士がマスクをしているか監視し合っているような異常な状態。
白眉なのが第二部で、五十音順に並べられたキーワードとそれに類する(?)映像のつるべうち。文脈を無視した映像と言葉の羅列はヒップホップ的で、テーマがセクシャル⇄ポリティカルをシームレスに行き来する感じはウェルベックの小説を読んでいる時にも近いと感じた。一番笑ったのは「正当化」のところで「豚は人間に食べられるために生まれてきたんだ」と子供に教える父親。
第三部はまさに現代SNS社会で白熱するキャンセルカルチャーの非人道さ・残酷さをそのまま表したかのような阿鼻叫喚。他者を容赦なく糾弾する人は本当に自分の中に後ろめたいことが無いのか？？正義面したPTAの親が賄賂をバラされる件は爽快。
結論を"決め切らない"エピローグも、本当にしょうもないラストショットも切れ味良くて最高。ディルドを口に入れる映像くらいは検閲無しでもいけるだろと思ったけどそれも批評的な視点込み、ということなのか…
