おらおらせきタン

ボーはおそれているのおらおらせきタンのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

アリ・アスター監督のこれまでの二作品と比較しても、何が起きているのか、何が現実なのか、がまったくもって分からないあまりにも不条理な映画。『へレディタリー』のような心霊要素もないし、『ミッドサマー』のようなグロもない(まあ、一応あるにはあるがそこまでではない)にもかかわらず、中々に怖い。だが、その「分からなさ」に悩まされつつも凄まじい画力と推進力で物語が進行していくため3時間という長尺ながらとてつもない没入感があるのは流石アリ・アスター監督。
主人公であるボウは過保護で虐待的な母親に育てられた結果、不安症と解離性同一性障害を抱えているよう。それゆえ、彼が見ている世界は不安による妄想なのか、それとも現実なのか、が全く読めないうえに、彼の行動もまた必ずしも一貫していないように思える。さらに、どうやら大企業の社長であったらしい母親によって『トゥルーマン・ショー』らしくその「世界」その物が仕組まれているのではないか、と思える描写もありさらに不可思議な事態に。
自分が何か失態をすれば母親に責められるという不安が自ら選択しないという行動につながるのだが、それによって事態が次々と悪化するという悪循環、そのうえ「自ら選択しないこと」が罪悪感の現れとみなされさらに追い詰められるというしんどい展開がなんとも身につまされる。