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ボーはおそれているの教授のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
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作品で描かれているテーマと作風や作劇がまるで合致していないという印象。
その為、面白さが皆無というわけではないけれど、概ね「面白くない」という感想。
そのため、語りづらいというよりも、何も思わないという気持ちが強い。

アリ・アスター監督自身の自己言及として、強迫神経症的に「家族の呪縛」特に「母親からの呪縛」があり、グロテスクな社会との対峙を回避的に生きてきた「富裕層AC中年」のボー(ホアキン・フェニックス)。
映画自体は誇張された「世界はそのように見えている」というもの。

「ヘレディタリー」も「ミッド・サマー」にも感じたことだが、テーマ設定は普遍的でも、問題の本質や、物語の構造がかなり浅いところで苦悶しているように思えて全く乗れない。
シンプルなことを、やたらと凝りまくって難解に仕上げていく作品がどうにも苦手だ。

それは、中年となった自分にとっても自己言及的に拗らせているところは存在する課題でもある。
あるにはあるが、それは作品にするほど切実なものかは正直微妙。
他者が怖いのも、そこに向き合うのも、無視するのも、それによってのしっぺ返しが挫折も、大なり小なり誰しもに関わる問題である。
その当たり前のことを恐怖し、あるいは笑いに変え、自分を罰するということが、むしろ内向的な行為で、自家中毒的にしか見えない。

本作は終盤特に、幾重にもどんでん返し的に展開がひっくり返る。
強権的にボーを監視する母に非がある点を指摘しつつ、それによって自発的な人生を放棄した自戒を、内的な想像の世界で自縄自縛的に「裁く」という行為自体、どこまで行っても自分自身の問題から抜け出ることなく3時間弱を付き合わされることの賛否がある。

「それが見せたい」という切実さはしょうがないことだと思うが、それを見せられても「勝手にしろ」という気分が生まれてしまうので賛でも否でも、気の抜けたことしか言えない。
体感的にはつまらなかった。
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