mさん

鳩の撃退法のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

鳩の撃退法(2021年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

この男の描く小説は
虚構か?それとも現実か?
なぜ彼は揺さぶるのか?
やがて彼の本当の目的が明らかになる…
常に揺さぶりをかけながら
進むエンターテイメント!

みたいなのを予告編で期待してみたら
スーパーショック。
結局この出来事が小説か現実かの揺さぶりが
何のテーマにも意味にも結びつかず映画が終わってしまった。

こういう何が嘘で、何が嘘じゃないのか
っていう映画は結構あるけど、なんでそういう構造なのか意味が欲しい。だけど今作は単純に観客を揺さぶって興味を持続させよう、エンタメ感を上げようという物語と関係ない意味しか見出せない。その揺さぶりに映画の物語が言及してくれないとこっちが感じた揺さぶりも全部無意味だったのかと思わされる。土屋太鳳さんが「これフィクションなんですよね?」とことあるごとに念を押すから自分もその気になってその後の津田の話を全て疑って聞いてしまう。そしたら沢山おかしな矛盾点が出てきた。

例えば

そもそも3000万円をおじさんが津田に渡す理由が津田に小説を書いて欲しいからというのが意味がわからない。そこまで津田ってすごいやつなのかが伝わってこないからこれは津田がいいようにでっち上げたフィクションキャラだと思ってしまう。

同じ理由で土屋太鳳もフィクショナルなキャラじゃないかなと思う。「これフィクションなんですよね?」と聞いて「そうだよ」と言われたらその度にあっさりと引く。3年前大変なことになったんだからもう失敗できないはずなのに恐ろしく緊張感がない。結局津田にいいように転がされてるご都合主義的なキャラだからフィクションキャラと思ってしまう。

あとは3000万円のキャリーバッグを小さい順に適当に入れていって日が暮れて、5555くらいで辛くなって、0229を入れたら開くって、何で0番台なのに空いてないの?と矛盾してし、

津田はいつも危ないところを奇跡的に助かるし

津田が現在進行形で巻き込まれてるならここまで余裕そうにバーで話してないだろうし

日本刀のヤクザに商店街を追いかけ回されるところとか信じられないくらい真剣に走ってないし、この先の展開をわかってる作者だから、真剣に走ってないってことなのかなと思った。

あと起こった物事から導き出すとか言ってるけど、流石に津田がいない所のセリフを何で津田は知ってるんだとか

自分の心情を口に出して話し出すような描写は、小説の心情描写をトレースしたものだからフィクション?とか思った。

こういう矛盾が結局全部どうでもよくなってしまうので、緊張感を持って疑いながら見てた自分がバカらしくなってしまう。「そこは確かにフィクションかもね〜あんま関係ないけど」みたいに言われた気がしてすごいがっかりした。シャッターアイランドとかだと「ああ、この時は○○の切実な思いがあってこういう矛盾になってるのね」とか胸を締め付けられたのに、今作はただ疲れて終わった。最後のこの物語はフィクションですの演出が粋じゃなく、むしろ「どこが現実でどこがフィクションかはわかんないけど、確実にフィクションのとこあるよ!」みたいな感じで観客を突き放したことに正当性をもたらそうとしてるようにしか思えなかった。

フィクションでしかできないこと、なぜ人はフィクションを作るのか、何のために嘘の物語に真実を見出すのか?とかすごい普遍的なメッセージを描けたはずなのに、全くそれを描こうとせずに小手先のエンタメ要素で終わってしまったのでショック。

最後の津田が本当は家族は失踪して死んだけど、
フィクションの小説の中では全員無事に生かした。フィクションの力で彼らを残す。みたいなことを言いたいのかもしれないけどやっぱり急だし、そもそも何でフィクションだって津田がずっと言ってたのかも結局よくわかんないから、何も語ってないなと感じてしまう。

そもそも津田の凄さがわからない。
文才能力が凄すぎるとか土屋太鳳が言ってるけど全く伝わらないし、何でおじさんが3000万円を出して書かせようとするかわかんないし、
そもそも失踪した家族と、3000万円のサスペンスという小説の導入はあくまで読者を惹きつけることはできるかもだけど、面白いかどうかはその結末を読まないと全くわからくない?と思った。それなのに彼の腕は確かですと言って続きを読ませてるのがよくわからない。小説だけにフォーカスしたらもっと続きが気になるような要素をいくつも出すことができると思うんだけど、今回はその小説を読んでる人たちも描写しないといけないので、小説の中身に全振りできない。だから物凄い小説の内容がシンプルになってしまう。

あとデリヘルという設定も別にそこまで必然性ない気がするし、この街の事件に全て関わってる男も全然怖くないし、3万円で何がしたいのかわかんないし、つがいのはとはどこだとか謎かけみたいなことしててめっちゃ余裕あるし、普通におバカなのかと思ってしまった。

やっぱり
芯であるフィクションかノンフィクションかの揺さぶりで語るべきメッセージやテーマが全くないので、がっかりしたし、描かれてない以上、他のメッセージがあったとしても副次的で大したものではないなと思ってしまう。期待してただけにちょっと残念だった。

会話シーン多めだけど面白くない。

子を身籠もっている演技ではなかった。

床屋のカットは鏡に映しながら撮ったり大変だなと思ったし、ラストの雪の中の車アクションのところとかはCM畑の照明が綺麗でよかった。
mさん

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