このレビューはネタバレを含みます
本作は、あまりにも鑑賞者を置いてきぼりにしてしまう、およそエンタメとは呼べない領域の作品であった。
観る側の読解力と考察力を試すという構成は、パズルのピースがある程度出揃っていないと成立しない。
考察しがいのある映画は、ときに難解と呼ばれることもあるが、足りないピースを想像させる工夫が施されており、それによって自分なりに完成図を組み立てみようと思う流れがある。
本作に登場するパズルは非常に少ない。
何が足りないか、鑑賞者が好きに想像できるので、良く言えば無限の解釈ができる。
が、あまりにも鑑賞者に負担の大きい作業である。
本作に仕掛けられたトリックは原作の小説(未読であるが)ならば、上手く機能するだろうと思ったが、映像に起こした途端、そのカタルシスと共に薄れている印象だ。
小説家が物語をハッピーエンドに書き換える。来たる現実から逃れるために。
娘が生きていたら、妻も生きているんだろうな。