矢野竜子

ヘカテ デジタルリマスター版の矢野竜子のレビュー・感想・評価

4.3
アフリカで時間や時代性という概念を喪失した主人公が
ただただ流されることで女性の幻影に沼っていく
真っ当なファムファタールもので魅せられた。
主人公が外交官というよりか
モラトリアムで春休み期間中の大学生にしか見えない。
何より出会いのシーンが良い。
後ろ姿の女性(シルクのスカートが風で揺れている)
を見つける主人公、
女性が振り返ると風で髪が顔を覆ってしまう。
その髪を戻そうとすると脇が見える、というシーン。
あと忘れ難いのが主人公がレコードを真っ二つに割って
女性の方を向くと、女性が脇を見せながら
髪をおろして別人のようになるシーン。
普段隠れているものが動作によって
露わになるという脇演出として記憶。
あと支配・被支配(男性↔︎女性、大人↔︎子供)の構図が
出てくるが戦時下の状況にもそのまま当てはまる。
最終的に男性の子供を支配することを
望むようになるから恐ろしい。
ドアップからモーション繋ぎで場面を転換させて
そこから一気に引いて落下をしっかり見せるシーンは
思わずおーっと言ってしまった。
ラスト女性が煙と共に去っていくのも良い。