mさん

ブラックボックス:音声分析捜査のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

劇場っていう場所で見るべき映画だった。
劇場は暗くて防音で映画から出る映像や音しか情報が受け取れない。友達も言ってたけど「いかに大きなスクリーン、良い音響か」だけが劇場の良さではなくて、「いかに映画以外の要素をシャットアウトできるかどうか」も劇場の良さなんだと気づいた。主人公と共に私たちは耳を澄ます。かすかな音が聞こえて、主人公と同じようにハッとする。この経験はさまざまな音が流れる家ではできない。だからこの映画がそういったシーンをいくつも作ってくれてよかったと思った。

ギルティと比較しちゃうけど、自分はこっちの方が楽しめた。ワンシチュエーションじゃなくて、音を超えた様々なサスペンス要素があったから。監視カメラ、秘密基地、仮説の検証など色んな要素があって面白かった。緊張が持続する。個人的には飛行機の座席だけ書かれた空間でその場にいるとどうなるのかを検証するシーンが好き。けど大事な部分はしっかりと主役の特技を活かして音で物語が進んでいく。ちゃんと軸はブレてなくてよかった。(耳がいいからこそいち早く外部の侵入者に気付けるみたいな部分が好き)

ただラスト彼は死ななくていいんじゃないかと思った。真実を追い求めるが故に命を落とす。真実を求めることだけが幸せに繋がるわけではないと言ったメッセージを込めた作品は沢山あるけど、今作ではその幸せにつながるわけではないの部分を妻との関係悪化や、マスコミや会社全てから見放されることによる孤独で一度十分伝わってくる。映画はその先も続くし、物語が動いてるならメッセージも動いてほしい。つまりもう幸せになれないと言うメッセージは描かなくていい。むしろ幸せになれない、それでも追い求めてしまう。そうすれば報われるかもしれないというラストでも全然アリだったと思う。そう言う話の運びを見て「じゃあ結局真実追い求めていいんだ。今までのこと全部無駄じゃね」って思う人はいないと思う。大事なのはいかに主役が真実に執着してるか。真実をどうやっても追い求めてしまうっていう姿勢だからぶっちゃけ幸せになれるかどうかの結果はそこまで重要じゃないと思う。だからそこまで重要じゃないし、すでに十分やり尽くしてるんだから最後くらい報われてもいいんじゃないかなって思った。せっかく心音が段々と小さくなっていくという音による演出もハマらなかった。

妻が耳をかきあげて髪から耳が出るショットが好き。あれで夫の言うことに耳を傾けるようになったっていうのを示してるように思えて好きだ。
mさん

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