こなつ

ブラックボックス:音声分析捜査のこなつのレビュー・感想・評価

4.0
2022年フランスの作品。
期待以上の面白さだった。元々は、つい先日鑑賞した「ジュリア(s)」のルー・ドゥ・ラージュがとても魅力的な女優で、彼女の出演作を探していたところ、この作品のことを知った。「体感的サスペンススリラー」というのはどんな作品なのだろうと興味を持つ。

ずっと目と耳が離せなかった。2転3転する成り行きに固唾を呑んでひたすら画面を追いかけ、ボイスレコーダーから抜き出される音声に自分でも聞き分けられるのかとじっと聞き耳を立てる。

ヨーロピアン航空の最新型機がアルプスに墜落。乗客300人乗務員16人全員死亡。航空事故調査局の音声分析官マチュー(ピエール・ニネ)は天才肌故に孤立していた。上司が謎の失踪をした事で、この事故の調査を任され、ブラックボックスの分析によってテロという説を発表する。しかし、被害者の一人が夫に残した留守電を聴いて、ブラックボックスの音と違うことに愕然とする。テロか、操縦ミスか、陰謀か、、音声分析官マチューが聴いた航空事故の戦慄の真相とは、、彼の妻ノエミは新型航空機の認証機関に勤め、夫にも言えない秘密を抱えていた。演じているルー・ドゥ・ラージュは本当に自然体で素敵な女優さん。

また映画「イヴ・サンローラン」で評価を得たピエール・ニネが、こだわりの強い独自の世界観を持つ天才肌の主人公を好演している。ノイズを分析しながら会話や足音、扉の開閉音を拾っていき、真実を暴いていく地道な作業とプロとしての素質が光る特殊技能が真に迫る。

ヘリコプターや飛行機の墜落などで良く出てくる「ブラックボックス」。勝手に黒いボックスと思い込んでいたが、色は黒ではなかった。耐熱塗料が塗られた赤やオレンジが一般的らしい。墜落時の衝撃や熱に耐えられるように厳重に密閉されている。フランス政府機関のBEA(フランス民間航空事故調査局)が全面協力とあって、本物のブラックボックス、セリフの中のリアルな専門用語や主人公が使用している機器類など、実に興味深い。

音に異常に敏感な彼だけが聞こえる世界、きっと劇場で鑑賞したら、もっと深く迫ってくる感覚を味わえたのかもしれない。

フランス国内で120万人突破の大ヒットとなった作品だけあって、航空業界を舞台にしたなかなか見応えのあるサスペンスだった。
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