しらす

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のしらすのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.5
なんとなくで観たら、とんでもなく志の高い作品で驚いた。2023年の映画で一番驚いた。

元々鬼太郎はマルチバースな要素があって‥原作の墓場鬼太郎とアニメ版(6期)の世界線がどのように分岐してるのかを描く、という非常に奇妙な映画になっている。水木と目玉の親父が実は過去に会っていたIFの世界線。その結果、墓場ではなく6期鬼太郎が生まれた。という、素晴らしいラストに繋がる。

水木しげる生誕100周年記念として作られたこの映画。
簡単にお祭り映画に仕上げてしまう事も出来ただろうが、水木しげるという作家を語るには欠かせない太平洋戦争での体験を作品に落とし込む‥しかも現代的な価値観を入れず、あくまで水木しげるの漫画の引用に留めながら。
当時の戦争に行った人の本当の気持ちは分からない、分からないことは描かない‥という極めてクレバーで真摯な映画だ。

ゴジラ-1.0との最大の違いは、ゲ謎には昭和31年という時代である必要性が必ずあり、あの戦争の本質‥しいては日本の村社会の問題性、国が悪かった‥と一言でいえない社会構造の歪みという‥あの戦争に至った本質を見事に描いているという点だ。

そして、それは戦後も何ら変わりなく続いている。だからこの映画には救いがない。
救いがないこの世界に、幽霊族でありながら人間の味方をする鬼太郎が誕生する。
人間の水木と幽霊族のゲゲ郎の2人の出会い、虐げられてきた人々の未来への思いを、ちゃんちゃんこに纏ったヒーローとして。

こんなのみせられたら、泣くに決まってるだろ!
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