カルダモン

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のカルダモンのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.4
『オイ!キタロー!』
アニメを見たことがある人なら脳内で甲高い声が再生されるに違いない目玉のオヤジの声。オヤジの若かりし頃に起こったある村の出来事。
幽霊族の生き残りであったゲゲ郎(ヤング目玉おやじ)が人間の水木と親交を深め合い、醜い人間に搾取される幽霊族の悲劇と怨念と鎮魂が現代風の作画で描かれる。漫画『墓場鬼太郎』に繋がる(?)エピソードゼロ。

ビジュアルが発する雰囲気でなんとなく合わないと察していたけど案の定だった。おどろおどろしい気配や奇妙な妖怪の個性に魅力を感じていた私にはあまりにも整いすぎたキャラデザインで、イメージの中にある鬼太郎像とはまったく接続しなかった(しかしこのキャラ付けや設定が現代の世にはウケたようで大ヒット)。

物語も重く陰惨な展開が過剰で、妖怪世界の魅力を感じることはなかった。妖怪たちがひたすら辛い目に遭わされているのも胸糞が悪い。戦中、戦後の日本を鬼太郎と結びつけるのは正しいけれども、『墓場鬼太郎』に繋げるのならもう少し全体のトーンを変えられなかったのだろうか。

結局、鬼太郎というIPで使われてるのはガワだけで中身は別物だという印象が拭えない。水木しげるの妖怪に対する憧れの眼差しや妖怪の目から見た人間社会の滑稽さよりもキャラ萌え重視、設定萌え重視。生誕100周年記念にして随分と離れたところまで来たもんだなと漫画版『墓場鬼太郎』を読み返しながら思う。

「ケケケケケ!」と、いやらしい笑みでジロリと人間を見つめる鬼太郎。ニヒルな感じ、金と食糧に貪欲で人間を見下すようなテイストが欲しい。2008年テレビアニメ版は絵柄のタッチも原作再現度が高く、皮肉的で好みだった。でもこれじゃヒットしないってことなのか。

深夜アニメ版の第一話『鬼太郎誕生』が公式で配信されてましたので比較までに。電グルの『モノノケダンス』も最高。
https://youtu.be/EZOjtawNgGo?si=JuKzH3oE9-ufLfTj