カルダモン

オッペンハイマーのカルダモンのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
-
たった79年前の話。一度作られてしまったものをこの世から消し去ることは100%できない。という絶望感を味わい暗澹たる気持ちになる。
もし仮に消すことができたとしても、潜在的に作る能力を持っていることは消し去れない。さらにもし、作ったという記憶や記録を全ての人間、媒体から消し去ることができたとしても、人間が人間の生活を守ろうとする限り同じようなものが発生する予感しかない。ならば、もっと原爆に対して違うアプローチはできないものかと鑑賞中にボンヤリと思考が横滑り、帰りの買い物のことなどが頭によぎったりなどした。

人間は一旦バカになるべきなのかも知れない。有り余る知能を制御できないのならそんな愚かなことは無い。あるいは天才=バカと言えるかも知れないが。
もし原爆が開発されていなかったらこの世はどうなっているのだろう、なんてバカがバカなりに考えても答えなんか出やしないが、海の向こうの国のことなど考えず、身の回り半径数メートルを大事にしたらその数メートルが波紋のように広がるのではないかと信じたい。

雨が降り、水溜まりの波紋が幾重にも広がる冒頭、止められない不穏なエフェクト。
人間の底知れない力に人間自身が震えあがり、あまつさえ手にした力がなにを意味するのかわからないまま多数の人物が加担していく。