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Firebird ファイアバードのコマミーのレビュー・感想・評価

Firebird ファイアバード(2021年製作の映画)
3.5
【禁じられた、秘密の恋】



※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞





「ブロークバック・マウンテン」や「君の名前で僕を呼んで」に惚れ込んだ人は必見の作品だし、"現代のマイノリティを象徴する"作品として本作は新たに刻まれた作品だなと感じた。
それに本作は、本作がキッカケで、舞台である"エストニア"の"同性婚を認めさせるキッカケ"になったというのだから、本作の効果は絶大であった事がわかる。監督の"ペーテル・レバネ"が劇中で"トム・プライヤー"が演じた"セルゲイ本人"から託された"回顧録"に惚れ込み、主演のトムも一緒にこの回顧録に惚れ込んで監督と共に脚本を手がけて本作が誕生したのである。

二等兵であるセルゲイと戦闘機パイロットである"ローマン"による、秘密の恋路の物語で、投獄の危険性も伴いながらも芽生え、そして消えゆくまでの過程を描いた物語である。
似たような物語として、昨年私が鑑賞したドイツ映画「大いなる自由」やA24の「インスペクション」を想起した。どちらも本作同様、その時代や環境下では"禁断"とされる同性愛の背景を描いた物語であった。そしてどちらも結末が非常に"辛いもの"となっている。
この「ファイアーバード」も同様で、結末は非常に辛いものであった。それに、物語は非常にシンプルである。だが、シンプルに心を攻めてくる物語だからこそ、期待値に応えてくれた作品だなと感じた。

そしてこのセルゲイとローマンが密かに交わるシーンがとても美しい。2人の役者の佇まいが美しいからなのかもしれないが、時代や周りの目が許さずともそこには確かに深い愛があるのだと、"尊さを感じざるを得ない"シーンだった。トム・プライヤーと"オレグ・ザゴロドニー"…この美しき彫刻のような2人の存在感が半端ない。

これは同性愛への偏見がまだ根強い日本だからこそ見てほしい作品だ。他の類似作品同様に、それぞれの国のそれぞれの時代のマイノリティ事情が垣間見えるだろうし、その役割を担う作品の一つが本作なのだ。現に、本作は先程書いた通り、エストニアの同性婚を認めさせるキッカケを作るという大きな快挙を成し遂げた作品なのだから…。
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