滝和也

ノーカントリーの滝和也のレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
3.8
顔がでかい役者は怖い。

ハビエル・バルデムが見たくなり、この1本を手に取った。

比較的苦手な映画と言える。音がない。音楽とのミックスによる高揚を欲しがる古いタイプにこの静寂がキツイ。異常に張り詰めた緊張感。淡々と進む展開に、深夜に見たため、寝落ちした…。

で朝見直してレビュー。アメリカの病巣を語る映画でよいのか。老人たちは語る。この国は人にきびしいと。自由の国だ。自己責任と言う名の下に自らのルールで誰もが動いたら、残るものは何か。何も残らない。ハビエル・バルデム演じるアントンシガーはその象徴でよいのか。

この映画には倫理観はない。うっすらだが、ベトナム戦争と言うワードがある。舞台は80年あたり。ベトナム以後は良き時代は終わり、これが現実と語りたいのか。

このレビューではあまりにもチープだ。私を悩ませる。もっと深いものがあるのか。誰にも避けられない死が彼なのか。わからない。

ただ言えることは、ハビエル・バルデムとは恐ろしい役者だ。スカイフォールでもクレイグ007を食ってしまう。その巨大な存在感。巨大な顔。映画全体を覆ってしまう空気を纏う。表情があろうが、なかろうが関係ない、あの顔。最大の賛辞を送りたい。ハビエル・バルデムを見たかったので十分満足だ。太ってしまった最近のジュリーに似ていると思うのは、きのせいか。

昔の時代劇役者は皆さん顔がでかい。だがそれがいい。顔がものを言う世界なのだ。映画を覆いつくすには。
滝和也

滝和也