シネラー

ローマの休日 4K レストア版のシネラーのレビュー・感想・評価

5.0
オードリー・ヘプバーンの代表作で
古典的名作の本作を4Kリマスターの
吹替えで劇場鑑賞。
王女と新聞記者が織り成していくロマンスは、
いつの時代でも魅力的だと言えるだろう。

物語としては、
連日の公務に嫌気が差したアン王女が
親善旅行中にローマの宮殿から抜け出し、
そこから出会った新聞記者ジョーと
たった一日の自由を謳歌する
ロマンスとなっている。
アン王女もといオードリー・ヘプバーンが全編通して可愛らしく、
観ていてこんな愛らしい人がいるのか
と思う位に愛おしかった。
脱げたヒールを引っ張ったり、
眠剤で朦朧として手を焼かせたり、
初めてのカフェに行って煙草を吹かし、
バイクに乗って暴走する等、
お嬢様と呼べる人物が無邪気に
粗相もしでかしながらも
純粋にデートを楽しむ様子は、
観ているだけでこちらも微笑んでしまう
デート風景だった。
真実の口、コロッセオ、トレヴィの泉、
スペイン広場といった名所を巡り、
こちらもローマ旅行したかのような
絵面も相まって良かった。
純真無垢な印象も強いアン王女だが、
王女としての責任は理解しつつも
一般人が行う料理や裁縫といった事を
教わったけど行えないと漏らす等、
その複雑に葛藤しながらも
責務を全うしようとする部分が
物語の切なさをより引き立てている
ように感じるところだった。

当初は新聞のネタの為に
王女と行動を共にするジョーだが、
次第にそれが愛情といった感情で
アン王女を想って決断するのが良かった。
その後の王女と記者としての対面は、
言葉は少なくとも互いの表情から
色々と感慨深くなるものがあり、
会見後に一人佇むジョーの
エンディングが映画の余韻として
申し分なかった。
街でアンと別れた際には彼女の
言いつけ通りに振り返らなかったのに対し、
ラストの会場では一度振り返る
ジョーからは未練とも言える
感情が汲み取れた。
ちなみに今回の上映では
淀川長治氏の日曜洋画劇場放映時の
映画解説が本編前後に挿入されており、
その解説と最後を締めくくる
「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」が
とても懐かし味があって良かった。

コメディと味わい深いロマンスが素晴らしく、
あまり恋愛映画を観ない身であっても
本作だけは何度も再鑑賞してしまう名作だ。
儚い一日のロマンスではなく、
一日の中での永遠のロマンスという
解釈が個人的に一番しっくりくるところだ。
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