ピュンピュン丸

大いなる旅路のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

大いなる旅路(1960年製作の映画)
4.0
どうということないストーリーだが、見終わる頃にはジーンと心に響いてくる。三國連太郎が運転する蒸気機関車に始まり、その息子の高倉健運転する『こだま』に終わり、時の流れを感じながら、最後にSLで幕を閉じる。

戦意高揚のための軍歌の合唱や戦後の労働者の歌の合唱が流れるが、それが自分には国民や若者を操ろうとする悪意の歌声にしか聞こえず、耳障りだった。

末っ子の中村嘉津雄が世間の荒波に打ちのめされ、家にたどり着いたとき吐いた平凡な一言が、とても強く胸をうった。

順調に親の跡を継いでいく高倉健のカッコ良さが光っていた。

ほんの一瞬だが、梅宮辰夫が出ていて、とてもとても若くてビックリしたのと、それに気付いた自分と、気づかせるスターとしての輝きに感じ入った。

あ~、それにしても、鉄道って、車にはない独特の哀愁があって、なんかせつない。列車の揺れる音、線路が軋む音、雪景色の中を一直線に突き抜けていく姿。それをカメラが線路から見上げるように映し出すと、なんともいえない情感がわいてくる。

そして、駅。駅構内を流れる放送って、無機質で業務的な内容なのに、何故に心をうつのだろう。自分がもし死期せまり、死の床で、元気な頃に聞き慣れた駅の列車の往来発着を告げる声が聞こえてきたら、きっと涙がこみ上げるだろう。

三國廉太郎演じる主人公の友人の人柄が素晴らしく、こんな人なかなかいないよと、思ってしまった。

そして奥さんの内助の功。

どちらも見覚えある有名な俳優さんだが、名前が出てこない。とにかく良かった。