新時代の任侠映画が誕生した。
ひとりの半グレが主人公。
ドキュメンタリー映画のような冒頭に早速惹きつけられる。
控えめの演技、だと思ったらこの主人公役の方、
映画出演自体が初めてという。
しかし、それがよりリアルさを醸し出し、
そのほかのキャストの方々も大半が演技初めてという人ばかり。
なんだったら監督も長編映画は初めての方。
ところがこれが最高なのである。
わかりやすく雑な説明をすると、ウシジマくんの出てこない
「闇金ウシジマくん」の世界、のような。
我々が知らない、ここ日本で本当に怒っている犯罪や事件を
実録やくざもののようなタッチで描く。
ジャパニーズ・ノワールと言えばとてもおしゃれな感じはするが、
これは世間からつまはじきにされている者たちによる任侠映画である。
犯罪に加担している人を描いているということはちょっと置いておいて、
惨めな思いをしながら地べた這いずり回って生きている人もいれば、
足を洗おうとして必死に前に進んでも過去の自分がつきまとい、
結局抜け出せない人もいる。
そんな彼らをつなぐ縁、それに心を打たれる。
虚勢だけではない、信念のある者は強い。
堅気にもやくざにも半グレにもドラマはある。
決して美しくきれいなものではないかもしれないが、
その一瞬一瞬のきらめきは確かに輝いている。
任侠映画でもあり、どこか青春映画のような雰囲気もあった。
こんな日本、こんな日本人を描く作品がもっとあってもいいはず。
きれいごとだけじゃない。リアルを伝えるのも映画だと思う。